インド発賃貸OYOが日本上陸!その法律的な実態は? | インバウンド賃貸法務研究会

インド発の「OYO LIFE」をご存じでしょうか。

不動産賃貸の新しいサービスとして、ソフトバンクとの合弁事業で日本進出し、ネットニュースなどで話題になっています。

今回は、こちらのOYO LIFEについて、法律的な側面から確認してみたいと思います。

ネット上で様々な情報が共有されていますが、特徴としては、

  • 敷金礼金仲介手数料がない
  • 家具家電付き
  • ウェブ完結(契約手続のために来店する必要がなく、ウェブ上で完結する)

といった点が挙げられます。

これまでの賃貸借契約は、物件を探して、たくさんの契約書類を確認し、家具家電を買ったり、引っ越しの準備をしたり、公共料金等の契約をして、やっと生活できる、というものでした。

これに対してOYO LIFEは、契約等々はweb完結、家具家電付き、公共料金や保険なども賃料に含まれているというものです。ホテルのように賃貸する、というイメージでしょうか。

18か月以下ならこちらの方がお得、という記載があることから、通常の賃貸借契約よりは短い契約期間をターゲットにしているようです。

法律的な観点から検討する

いわゆるサブリース形式で、オーナーさんから借り上げをしているようです。

これは、Webサービスでの契約締結・完結を目標とした結果と思われます。

店舗での対人対応など、対面のコミュニケーションを減らし、スマホで完結したいとすると、通常のオーナーと入居者を媒介する法形式であれば、当然のことながら宅建業者により重要事項説明義務が生じます。

この場合は、対面で行うか、あるいは、いわゆるIT重説の要件を満たした説明を行う必要が生じます。

スマホなどを利用してのIT重説をしたとしても、書面自体は郵送で行う必要があるので、完全にペーパレス・スマホ完結にはなりません。

そうなると、OYO LIFEの法形式としては、不動産オーナーからサブリースで借り上げているものと思われます。

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では、入居者との契約関係はどうか?

(以下、「OYO LIFE」ホームページ https://www.oyolife.co.jp/ より引用)

最短契約期間はどの長さから可能ですか?

最短31日でご契約が可能です。(一時使用契約書)

こちらのご契約はすべてオンラインにてご対応頂けます。

90日以上の契約をご希望の場合、定期建物賃貸借契約にてご契約させて頂きます。こちらは法令上書面での契約並びに音声での説明が必要となります。

このように最短31日での契約で、一時使用契約、90日以上の契約の場合には定期建物賃貸借のようです(なお、定期借家契約の場合には、書面契約が必須であり、「説明」が必要。)。

まず契約期間は最短31日なのはなぜか?

賃貸借期間が1か月未満の場合には、厚生労働省の見解に基づけば、賃貸借契約を締結したとしても、旅館業法の許可が必要となります。

旅館業の許可なく行えば、旅館業法違反になり、刑事罰を含めた罰則があります。

旅館業の許可は消防なりエリアの問題などがあり、取得するにはそれなりのハードルがあります。

そのために、旅館業の許可なく運用できる最短31日という形式になっていると思われます。

そして、契約の形式は、借地借家法40条の一時使用契約を利用しています。こちらの法形式であれば、定期借家契約と違って借地借家法38条2項の書面交付と説明をする規程がありません。

そのため、契約はすべてオンラインで対応できるということになって、スマホで完結できる、といったところです。

では、90日以上の場合は、定期建物賃貸借契約とする理由はなぜか?

こちらは、3か月を超えるような場合には、一時使用賃貸借契約ではなく、一般賃貸借契約となってしまう可能性があることを考慮してのことと思われます。

法律上、明確に○○日以上であれば一時使用賃貸借契約にはならない、といった規程が存在するわけではないと思われますが、解釈として3か月を超えると「一時使用とはいえない」と考えているのだと思われます。

ただ、この種の大規模資本が入っている企業であれば、当然のことながら、それ相応のリーガルチェックを経ているはずです。

どういう根拠で一時使用賃貸借と定期借家契約を90日で分けた運用としたのかはわかりませんが、一時使用賃貸借と定期借家契約を90日で分けて運用するというのは、同じようにマンスリーマンションをウェブ完結で運営している会社にとっては、一つの目安の基準になると思います。

もちろん、本来的には、一時使用の裁判例などから逆算した事実関係を記録化するなり契約書に盛り込むなどして、一時使用であることを立証できる体制を整えておくことが必要です。

ここは推測ですが、画一的でシンプルなオペレーションを目指した結果として、90日に区切ったもののように思われます。

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退去については立会が必要?

ちなみに、スマホで退去手続とはいうものの、現時点でネット上に記載されているOYO LIFEの予約規約によると立会は行うようです。

(OYO LIFE予約規約 https://www.oyolife.co.jp/terms より引用)
第12条 退居方法
(略)
(3)退去当日は午前10時から午後6時の間に当社立会のもと退去時確認を行います。

結局、マンスリーマンション?ということは??

さて、ここまでお読みいただいてとお気づきかと思いますが、結局のところ、期間が1か月以上、家具家電付き、公共料金や保険なども会社側負担ということからすると、形式としては、マンスリーマンションのビジネスモデルと大差はない、というか、同じかなと思います。

私の方が直接関与している顧問企業様から、ウェブ完結でのオペレーションを整備したいというご相談を受ける場合があります。

基本的には、1か月以上のマンスリーモデルについて一時使用賃貸借書を整備してもらい、一定期間以上であったり、入居目的などを確認したりするなどして、一時使用賃貸借で問題となるような場合には、定期借家契約を締結する運用としていただいています(なお、顧問契約を締結している企業すべてが上記オペレーションではありません。

Web完結に向けて直接コンサルティングさせていただいた会社様に限ります。)。

言い換えると、OYO LIFEの日本進出は、「海外から日本へ、大規模な資本のマンスリーマンション事業が新規参入してきた」と評価することもできると思います。その意味では、今後は、マンスリーマンションのビジネスモデルでも、競争が進んでいくことになると予想されます。

まさに「黒船襲来!」とったところでしょうか。

これに対するオーナーさん確保のために、考えておきたいところの一つとしては、オーナーさんに対するwebサービスかと思うのですが、こちらはまた別の機会にお話ししたいと思います(ちなみに、OYOも法人契約可能ですし、ソフトバンク資本であればprop techとか、WeWorkみたいなSaaS化の方向性もあるんでしょうね)。

ちなみに、どこかのタイミングでOYO LIFEを使ってみたいのですが、いまのところ都内のみで(2019.4.4現在)すし、滞在日数が31日以上という点も考えると、なかなかチャンスがないところです。

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