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遺品整理・特殊清掃におけるクレーム対応の基礎【弁護士が解説】

~クレーム対応の基礎~

遺品整理・特殊清掃業におけるクレーム対応の重要性

遺品整理・特殊清掃業は、超高齢化が到来している日本における成長産業です。

一方で、その多くは小規模事業者であり、人員に余裕のあるところが多いわけではありません。

遺品整理・特殊清掃業もサービス業ですので、クレーム対応はどうしても業務につきものではありますが、人員に余裕のない小規模事業者にとって、クレーム対応に時間を費やすことは、事業運営にとって致命的な影響を与えかねません。

また、近年、以下のような事情から、以前よりもクレーム対応が重要なものとなってきています。

クレームPOINTS 1
✔︎企業の様々なトラブルが顕在化してきた
✔︎かつてよりも我慢のできない人々が増えた
✔︎匿名でのクレームが可能な社会となった

このように、今やクレーム対応は、大規模な会社だけでなく、遺品整理業・特殊清掃業者の多くを占める中小企業においても必須のものといえるでしょう。

クレームの増加が与える悪影響

クレームの増加が業務に与える悪影響として、以下のようなものが挙げられます。

クレーム増加による悪影響
✔︎従業員の人的コストを消費する (クレーム対応に人手を取られ、本来の業務が圧迫される)

✔︎従業員の士気が低下し、作業効率が低下する

✔︎クレームに起因する、会社の評判の下落の可能性 (クレーム対応を誤ると、ネットに悪評を書き込まれたりすることもあり、会社の評判下落に繋がりうる)

✔︎既存の集客にも悪影響が生じうる (クレーム対応に追われることで、本来のサービスに手が回らなくなり、お客さんを逃すことにも)

いずれも、事業者にとっては非常に大きな問題です。

特に、人的コストの圧迫、従業員の士気の低下は、小規模事業者が多い遺品整理・特殊清掃業においては致命的なものともいえます。

だからこそ、このような悪影響が生じないよう、対策を打っておく必要があるというわけです。

クレーム発生の原因

まず、クレーム発生の原因とは何でしょうか。

一般的には、クレームが発生する原因として

お客様自身のサービス・商品に対する期待水準を大きく下回った場合

と言われています。

これをさらに類型化しますと

1.こちら側の業務内容に落ち度がある場合(作業ミス等)
2.こちら側の業務内容には落ち度がないが、その他の点で落ち度があった場合(説明不足や、担当者の対応のまずさ等)
3.こちら側に何らの落ち度もない場合(難癖等)

 の3つの場合に分けられます。

クレーム対策その1(対応への心構え)

クレーム対応において最も重要なのは「初期対応」です。クレームが生じてしまったとしても、対応さえ適切であるならば、ほとんどの場合にはクレームが顕在化することはない(初期対応の時点で沈静化する)、 と言ってもいいくらいです。

それでは、どのような初期対応が求められるのでしょうか。お客様からの連絡を受け、それをクレーム化させてしまう人の対応には、一般的に以下のような点があるといわれています。

直すべき初期対応!
✔︎ お詫びができていない
✔︎ 言い訳をしてしまう
✔︎ 事実確認ができていない

この3点を踏まえたうえで、クレームの初期対応としては、以下の意識をもって取り組むことが大切です。

初期対応に必要な4つのこと!
1.「組織の代表者」という意識をもって対応をする
2. まずは話を聞く(とりあえずは相手に話をさせる)
3. 事実を確認する(何に不満を持っているかを把握する)
4. 代替案・解決策を提示する

要するに「当事者意識を持つ」「クレーム相手に寄りそう姿勢を見せる」この2点をまずは心がけるようにしてください。

クレーム対策その2(実際の対応方法)

初期対応を行うに際して、以上のような心構えを持ってもらえたところで、実際の対応としてはどのように行ったら良いのでしょうか。

この点に関しては、①で説明した原因によって以下のように分かれます。

CASE 1.こちら側の業務内容に落ち度がある場合
➡まずは謝罪し「クレーム発生の経緯」「再発防止策の実行」を伝える
CASE 2.こちら側に落ち度があるか否かが不明な場合
➡まずはお客様の事情を聞く。そのうえで事実関係を明らかに
CASE 3.こちら側に非がない場合(一方的にまくし立ててくる方など)
➡まずは話を聞く(3分が目安)。

➡️「こちら側に非がない」という事実や主張を「少しずつ」伝える

クレーム対策その3(再発防止策の実践)

クレーム対策に関しては、実際に生じた場合の対応が重要なのはもちろんですが、それと同じくらい、再発防止策の実践が重要です。

再発防止策をきちんと実践することによって、クレームの発生原因の除去や次回以降の速やかなクレーム対応に繋げることができます。

再発防止策に関しては、会社の規模や状況により様々なものが考えられますが、どのような場合であったとしても、次の3点を意識するようにしてください。

3つの再発防止対策!

1.クレームは対応者「個人」ではなく職場内で「協力して」立ち向かう
クレーム対応が得意な人がいた場合であっても、任せきりは絶対にNG【他の人にバトンタッチできないということ自体が精神的な負荷に繋がります(これは社長等でも同様です)】

2. クレームの情報は社内で共有する
クレーム対応の経験の蓄積が今後の迅速なクレーム対応に繋がります

3. 職場内でクレーム対応体制を構築する(対応マニュアルの作成等)
体制をあらかじめ構築しておくことで、クレーム対応が効率化するだけでなく、個々の対応者に対する負担軽減にも繋がります。

終わりに

今回は、クレーム対応の一般的な対策について説明してきました。

遺品整理業・特殊清掃業者特有の問題点については別の記事で説明しますが、まずは本記事で説明した点を押さえていただき、実践することが重要です。

■遺品整理・特殊清掃に注力する弁護士■
栃原 遼太朗
Ryotarou Tochihara

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