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遺品整理業に必要な許可の取得方法と注意点①~一般廃棄物収集運搬業許可~

はじめに

別の記事(遺品整理業の概要 )でも説明したように、実際に遺品整理業を適法に行うためには、様々な許可を取得している必要があります。

今回は、そのうちの「一般廃棄物収集運搬業許可」の取得について、その要件や、取得に当たって注意すべき点について、説明していきます。

既に許可を取得している方も、遺品整理業への参入に際して注意すべき点につき、本記事でいくつか説明しておりますので(主に⑸)、一読いただけると幸いです。

一般廃棄物収集運搬業許可の要件

一般廃棄物収集運搬業の許可に関しては、当該収集運搬業務を行う区域の市町村長からの許可を受ける必要があります(廃棄物処理法7条1項本文)。

そして、許可を受けるためには、以下のような、廃棄物処理法7条5項の各号に定められた、要件をすべて満たしている必要があります。これらの要件については、概要としては以下のとおりです。

一. 当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること。

二. その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること。

三. その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。

四. 申請者が、法律の定める欠格要件に該当しないこと

これらの要件の詳細については、次の項で説明していきます。

各要件についての検討

一号要件】(市町村による収集・運搬が困難であること)

そもそも、このような要件が定められている理由としては、法律上は(収集・運搬も含め)一般廃棄物の処理は、行政が行うのが原則であり、民間の業者にその処理等を行わせるのはあくまで例外という考え方があるためです(廃棄物処理法6条2項参照)。

それでは、実際に「市町村による収集・運搬が困難であること」というのはどのような場合なのでしょうか。こちらに関しては、環境省からの通知で以下のような判断基準が示されています。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律第七条第三項第一号及び同条第六項第一号に規定する一般廃棄物処理業者の許可要件について(環廃213号・交付日:平成15年3月17日)


【通知名の条文番号は通知当時のもので、現在の条文とはズレがあります】

 標記許可要件として、当該市町村による一般廃棄物の収集若しくは運搬又は処分  が困難であることとされているが、その一般的な認定の基準として、概ね次のような考え方によることは妥当と考えられること。

(一) 一般家庭から生ずる通常の一般廃棄物については、原則として困難とはいえない。

(二) 工場又は事業場から生ずる通常の一般廃棄物については、その量が廃棄物処理法第六条の二第五項により運搬を命ずる程度に達するもの又はその性質等が同法第三条により自家処理を命ずる程度に特殊なものは困難と認定されるが、それ以外の一般廃棄物は原則として困難とはいえない。

(三) (一)及び(二)で原則として困難とされない一般廃棄物であっても、交通の状態その他の事情により、夜間収集作業を必要とするものについては、困難と認定できる場合がある。

(四) 浄化槽にたまった汚泥については、その収集運搬は、浄化槽の清掃と一体的に行われるのが通例であるので、そのような場合には、汚泥量の多少を問わず、全体作業的にみて困難と認定することができる。

(五) 原則的には、以上のような基準により判断することが妥当であるが、一般家庭から排出される通常の廃棄物についても、

当該廃棄物を市町村が自ら収集、運搬又は処分し、又は市町村以外の者に委託して収集、運搬又は処分する体制が整わない場合は、

現に一般廃棄物処理業者が廃棄物処理法第七条第一項又は同条第四項の許可に基づいて収集若しくは運搬又は処分しているものについて困難と認定することができる。

 なお、旧清掃法(昭和二九年法律第七二号)第一五条第一項の許可について判示した最高裁判所第一小法廷判決(昭和四七年一〇月一二日)によれば、市町村長が当該許可を与えるかどうかは、

同法の目的と当該市町村の清掃計画とに照らし、市町村がその責務である汚物処理の事務を円滑完全に遂行するのに必要適切であるかどうかという観点から、これを決すべきものであり、

その意味において、市町村長の自由裁量に委ねられているものと解するのが相当である、とされていること。


 このため、旧清掃法第一五条第一項の許可を引き継いだ廃棄物処理法における一般廃棄物処理業の許可に係る標記許可要件についても、同様の考え方から市町村長の自由裁量に委ねられているものと解されること。

少し長く複雑ではありますが、上記の通知のポイントとしては、以下の2点となります。

● 一般家庭から生じた一般廃棄物(家庭系の一般廃棄物)の処理については、原則として困難ではない(当該要件を満たさない)。

● この要件に該当するか否かに関しての判断には、市町村長に広い裁量が認められている。

遺品整理業において生じる業務は「家庭系の一般廃棄物の収集・運搬」であることを踏まえますと、許可の取得を検討するにあたっては、この要件を満たすか否かは一つの大きな問題となるといえそうです。

【二号要件】(申請内容が一般廃棄物処理計画に適合すること)

この二号要件における「一般廃棄物処理計画」については、各市町村に計画を策定することが義務付けられています(廃棄物処理法6条1項)。

計画に記載する内容に関しては、2項に記載されていますが、「廃棄物の排出量の見込み」や「分別収集を実施予定の一般廃棄物の種類・区分」等について記載が必須となります。

また、上記の計画には、基本的な事項を定める基本計画と、基本計画の実施のために必要な各年度の事業について定める事業計画の2つがあり(廃棄物処理法施行規則第1条の3)、申請内容はいずれについても適合している必要があります。

これらの計画については、各市区町村によって策定されており、その地域ごとの実情に応じて内容は様々ではありますが、

環境省から「ごみ処理基本計画策定指針」というものが出されており、

各市区町村は一定程度この指針に沿ったものとはなっているように思われます。

【三号要件】(事業者の能力が、事業を継続するのに十分であること)

こちらについては、廃棄物処理法施行規則に以下のとおり定められており、この2つの要素を満たす必要があります。

 一般廃棄物の収集又は運搬を的確に行うに足りる知識及び技能を有すること。

ロ 一般廃棄物の収集又は運搬を的確に、かつ、継続して行うに足りる経理的基礎を有すること。

以上の点を満たすために、能力認定試験を課している自治体も多くみられます。

【四号要件】(欠格要件に該当しないこと)

欠格要件とは、法に従った適正な業の遂行を期待できない者を類型化したもので、廃棄物処理業以外の許可や各種資格業等を定めた法律にも定められているものです。廃棄物処理業の欠格要件としては、破産した者、未成年者、罰金刑や禁錮に課せられた者等が該当します。

許可申請を検討するにあたっての問題点

許可の判断に関して、市区長の判断に委ねられる部分が非常に大きく、取得が可能かどうかの判断が難しい

⑶で説明した要件については、四号要件を除き、非常に抽象的なものであり、またその基準も各市区町村によって大きく異なります。

したがって、「他の市区町村では同様の条件で許可が下りたのに、許可が下りなかった」などといった事態が生じる可能性も十分にあります。

なお、このように、許可の要件の該当性に関して、許可権者(市区町村)に判断が委ねられる部分が大きいことを、法律用語として、「(要件)裁量」が認められる、といいます。

また、許可を取得するには、少なくとも⑶で説明した要件をすべて満たす必要があるのですが、

注意すべきなのは、これらの要件をすべて満たした場合に、必ず許可が下りるわけではない、ということです。

廃棄物処理法7条5項は、「市町村長は、(一般廃棄物収集運搬業に関しての)許可の申請が、次の各号(上記に示したものです)に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない」と定められており

「次の各号に適合した場合に、市町村長は、許可をしなければならない」と定められているわけではありません。

なお、このように、法律上の要件を満たしたことを前提として、許可権者(市区町村)に、許可するか否かという点が委ねられていることを、法律用語で「(効果)裁量」が認められる、といいます。

以上のように、一般廃棄物収集運搬業許可に関しては、法律上許可権者である市町村長に非常に広い裁量が認められます(判断が委ねられている)。

このことが、許可の申請を検討するにあたって悩ましい点の一つといえます。

(特に都市部において)一般廃棄物収集運搬業許可の新規申請を受け付けないとの運用を取っている自治体が多い

一般廃棄物収集運搬業の許可に関しては、行政(市区町村)に広い裁量が認められることは既に説明したとおりではありますが、

一部の自治体(特に都市部)では、一号要件に該当しない(現状の一般廃棄物収集運搬許可業者で、十分に処理能力が賄われている)ことを理由に新規の許可申請自体を受け付けていないところもございます。

一号要件の基準についても、各自治体に広い裁量が認められておりますので、その自治体側が「一号要件を満たさない」という判断をしている場合には、新規の申請は非常に難しいと言わざるを得ません。

もちろん、裁量があるといっても、明らに判断がおかしい(不合理である)場合には、異議を述べることも可能であるのですが、

このような異議が認められるのは現実問題として極めてまれである、ということになります。

許可申請を検討している自治体がこのような運用を取っていた場合は、別の地域で行うことを検討した方が良いかと思います。

許可取得後に注意すべき点

一般廃棄物収集運搬業許可は、あくまで「その区域」ごとに出されるものであること

市区町村から認可される一般廃棄物収集運搬業の許可は、あくまで「その区域における収集運搬業務」に限定されたものです(廃棄物処理法7条1項本文参照)。

したがって、すでに許可を取得している業者の方が、事業拡大等により別の地域で遺品整理を行う場合には、改めてその地域での許可を取得する必要がございます。

一般廃棄物収集運搬業の許可において、費目が限定される場合がある

一般廃棄物収集運搬業の申請が市町村から認可され、許可を取得する際、費目が限定された形で認可されることがままあります。

このような場合は、あくまで許可されているのは、限定が付された費目に関しての一般廃棄物の収集・運搬であり、その他の費目の一般廃棄物に関して収集・運搬を行うことは違法となってしまいます。

したがって、既に許可を取得されている業者の方々におきましても、許可に限定が付されているか、限定が付されている場合に、

遺品整理業において予測される一般廃棄物が記載されているか、という点について、事前に確認しておいた方が良いでしょう[1]

おわりに

ここまで、遺品整理業を行うのに必要な、一般廃棄物収集運搬業許可の取得要件等に関して説明いたしました。

現時点においては、新規取得はハードルが高いといえますが、地域によっては取得の可能性がございます。

しかしながら、その場合でも決して簡単に取得できるわけではなく、必要書類等についてしっかりとした準備が必要となるのは間違いありません。

遺品整理業を行うに際し、新規取得を検討されている方は、早い段階で弁護士をはじめとした、専門家に相談することが良いでしょう。

一方で、既に許可を取得している方にとっては、現状大きなビジネスチャンスとなり得る分野であることは間違いありません。

法改正等により、今後状況が大きく変わる可能性もございますので、許可を取得している方で、遺品整理業への参入を検討している方も、お早めに専門家にご相談することをお勧めします。

脚注

[1]  なお、既に許可を取得している場合に、その範囲(費目等)を変更するためには、(一部廃止の場合を除いて)変更許可申請を行い、改めてその変更範囲についての許可を得る必要がある(廃棄物処理法7条の2第1項)。


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