特集

遺品整理・特殊清掃業における適切なごみ処理その2

遺品整理・特殊清掃における「ごみ」の取り扱い

前回の記事では、遺品整理業(特殊清掃業)において生じる「ごみ(廃棄物)」の法的性質について解説しました。

今回は、「ごみ(廃棄物)」の法的性質を踏まえたうえで、適法に処理を行うにはどうすべきか、という点につき、説明していきたいと思います。

一般廃棄物の収集・運搬に関する許可(一廃許可)に関する取得可能性

前回の記事において、「遺品整理業(特殊清掃業)において生じるごみ(廃棄物)の収集・運搬については、許可(一廃許可)を得る必要がある」との説明をさせていただきました。

それでは、遺品整理業(特殊清掃業)を行う業者は、一廃許可を取得すれば良いのかというと、話はそう簡単ではありません。理由としては、大きく分けて以下の2点によります。

①一廃許可の範囲は、地方自治体ごとに限定されること

一廃許可は「当該業(一廃廃棄物の収集運搬)」を行う区域」ごとに許可を受けるものです(廃掃法7条1項)。すなわち、一度一廃許可を取得したからといって、別の地域でも許可が有効(一廃の収集運搬が可能)、ということにはなりません。

②全国の地方自治体の多くが、新規業者への一廃許可を出さないこと

一部例外はありますが、現在、地方自治体のほとんどが、一廃許可に関しては「新規業者には許可を出さない」という運用を取っています。

なぜこのようなことが許されるのか、といいますと、法律上定められております許可の基準が、地方自治体の判断を大きく尊重するような立て付けとなっているためです(法的にいえば「(要件)裁量が大きい」となります)。

具体的には、以下の点によります。

そもそも、一般廃棄物の処理等が地方自治体の事務として法律上定められていること(廃掃法6条の2第1項)

法律上定められている一廃許可を出す条件(許可基準:廃掃法7条5項)の中に

「市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること」(一号)

「許可申請の内容が一般廃棄物に適合するものであること」(二号)

というものがあること

このように、法律の定め自体が「一廃許可を出すか出さないか」という判断について市町村(地方自治体)に大きな裁量を認めているため、「新規業者への許可は一律認めない」といった運用も許されてしまう、ということになります。

このような運用が適切である、とは思いませんが、少なくともこのような運用が、ただちに法律違反とはならない、ということです。

遺品整理業(特殊清掃業)における適法なごみ処理方法

ここまで

・「遺品整理業(特殊清掃業)」において発生するごみ(廃棄物)の収集・運搬には一廃許可が必要

・一方で、一廃許可の新規取得は難しい

というお話を行ってきました。

これだけみると「適法なごみ処理なんて不可能では…?」と思ってしまうところですが、だからといって違法なごみ処理(無許可での廃棄物の収集・運搬)を行いますと、以下のような罰則が科される可能性があります。

・個人:5年以下の懲役または1000万円以下の罰金 (法第25条第1項第1号)
・法人:3億円以下の罰金(法第32条第1項1号)

また、これだけでなく、一度違法行為を取り締まられますと、以後の事業継続に重大な悪影響(信用の悪化等)が生じかねません。

そこで、どのようにすれば遺品整理業(特殊清掃業)におけるごみ(廃棄物)を適法に処理できるか、以下のとおり説明します。

①一廃許可を有している業者(一廃業者)に委託する

原則としては、この様な形で処理するのが良いでしょう。地域ごとの一廃業者については、地方自治体ごとにリストが公開され、連絡先等もこちらに記載されているので、そこから連絡を取り、処理を委託するのが良いでしょう(「自治体の名前」「一廃業者」などのワードで検索をかければヒットすると思われます)。

特定の業者を繰り返し利用し、信頼関係を形成しておくことで、多少の融通を聞いてもらえるようになったりもするようです。

②行政に個別に収集運搬をお願いする

⑵でも触れたとおり、一般廃棄物の処理はそもそも地方自治体の事務と法律上定められています。

これはすなわち「地方自治体が了承すれば、個々の一般廃棄物の処理業務について許可を与えることは可能」ということになります(ここまで説明した一廃許可は特定の地域内での全般的な許可ですが、ここで説明するのは、特定の一廃の収集運搬に関する個別的な許可です)。

そこで、業者が個々の案件ごとの一般廃棄物の収集・運搬に関して、個別に地方自治体にお願いするという手段が考えられます(法律上もそのような措置を予定しております:廃掃法規則2条1号)。

ただ、こちらの許可(個別許可)に関しても、出すか否かは各地方自治体の裁量によるところになります。

実際にこの形で許可をもらうには、①の方法ではどうしても対応できない事情がある、という点につき、きちんと説明する必要は少なくとも求められそうです(また、例外的な措置でありますので、事前の根回しが重要となります)

おわりに

本記事では、遺品清掃業(特殊清掃業)において生じる「ごみ」の適法な処理方法について解説しました。この点は、業者の皆様方が頭を悩ませている問題ではありますが、遺品整理・特殊清掃業という成長産業を継続的に続けるためには、法に則って業務を遂行することも重要です。

今回説明したもののほか、個別の地域の実情に応じて、取りうる手法も変わってきますので、お悩みの点等ございましたら、お気軽にご相談ください。


この記事を書いた人

弁護士:栃原 遼太朗

大阪府出身。京都大学法科大学院修了。東京弁護士会所属。
現在は、弁護士法人一新総合法律事務所・東京事務所で不動産分野に注力している。
【得意分野】
不動産賃貸住宅業に関する法律 / 賃借人死後のトラブル対応 (相続等) / 賃借人死後の遺品整理・特殊清掃に関する対応 / 不動産・遺品整理等のセミナー講師 / 不動産管理業の中でもさらに注力した遺品整理・特殊清掃業の顧問先を開拓中

 本記事は2020年7月執筆時での法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

特集カテゴリの最新記事