法務問題

2020年4月施行まで残りわずか!不動産業からの民法改正に関するご相談TOP3

はじめに

2020年4月1日から改正民法が施行されます。昨年より多くの不動産会社様に民法改正のご相談を頂いており、また、改正民法に関するオーナー様向けセミナーや勉強会についても、数多く実施させて頂きました。

改正まで残り3か月ちょっと、ほとんどの不動産会社様やオーナー様がもう対応完了した??と思っていたところですが、今年の11月くらいからこれまで以上に勉強会やセミナーのご依頼を頂いております。

そればかりか、すでに年明けから4月にかけてのオーナー様向けの民法改正セミナーや、社内勉強会などのご依頼も頂いております。

ということで、これから民法改正に対応する不動産会社様・オーナー様も多くいらっしゃるかなと思い、一新総合法律事務所・東京事務所でも年明けから順次セミナーを実施する予定です。(日程は年明け早々にご案内する予定です!)

さて、今回は、そのセミナーに先立ち、2020年民法改正について、弊所の顧問先様からよく相談される民法改正のテーマと、それについてのポイントを一言で触れていきたいと思います。(注意:順位付けは、あくまでも経験と感覚に基づくものです。)

第3位 目的物の一部使用不能に伴う賃料減額

改正内容

賃借人に過失なく賃貸している部屋の設備(トイレなど)が壊れた場合に、当然に賃料が減額されます。このような場合には、改正前民法では賃借人から請求があってはじめて減額されたのですが、改正民法では当然に減額されることになりました。

問題点

突然、設備関係が壊れたことなどを原因として賃料が当然減額となる可能性があります。通知義務等の関係を理解していないと対応に十分な対応ができないと思われます。
★対策ポイント
事業者への賃貸と一般の居住用賃貸で個別に基本契約書を整備します。物品が使用不能となったときの減額割合や通知義務などを明確に定める必要があります。

第2位 瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

物件仕入れなどで売買契約を結ぶ場合に問題となります。

改正内容

これまで物件の仕入れ等で「瑕疵」があると損害賠償や解除ができたものが、「瑕疵」ではなく「契約不適合」かどうかで損害賠償等ができるかどうかが判断されます。

よくある問題点

契約不適合になるのはわかったが、具体的になにを対策してよいのかがわからない、民法改正対応のために不動産業者として何をすべきかがわからない、といったケースが多いです。
★ポイント
契約書、特約、重説など契約書関係のリーガルチェックがいままで以上に重要になる。なぜなら、契約不適合の場合に責任が生じるから。

第1位 個人保証の極度額設定が義務化

そして、なんといっても一番多いのは個人保証の極度額です。

改正点

賃貸借契約の個人保証人について、極度額(保証する限度額)を定めなければならない。

問題点

これまでどおりの契約書を利用すると、場合によっては、保証契約が無効となってしまう。契約更新時の運用によっては、保証契約が無効となってしまう。
★ポイント
契約更新時に改正前民法が適用されるのか、改正後民法が適用されるのかを踏まえる必要。改正民法を踏まえた上で「今年の契約更新はどうするのか」を決めておく必要があります。

というわけで、やはり多いのは個人保証の極度額設定の義務化です。

なにも検討準備をしないままでいると、連帯保証が「無効」となってしまい、大きな影響が生じてしまう可能性もあります。

どのような場合には、極度額を定める必要があり、どのような場合には定める必要がないのか、ここについては自社ではどう運用するかについてはっきりとした取り決めをしておくことをお勧めします。

番外編

これまであまり相談で話題になることはなく、TOP3には入っていないのですが、不動産会社の営業担当者が知っておいた方がよいと思うのが、「3つの情報提供義務」の話です。

  • 事業用賃貸借の個人保証人への契約時の情報提供義務
  • 保証人に対する賃貸借契約の履行状況の説明義務
  • 滞納賃料等の分割払い約定が履行されなかったときの保証人への情報提供義務

の3点があります。この3つについても、ここでは詳しく触れませんが、不動産管理業の担当者様・オーナー様としては、ぜひ知っておきたい知識の一つだと思います。

その他にも、ホテルや民泊などの宿泊事業を営む方には定型約款も関係しますし、債権管理という観点では、消滅時効制度の改正も押さえておくべきポイントになると思います。

さて、以上のとおりですが、いかがだったでしょうか?

120年ぶりの大改正ということもあり、不動産のプロである管理業の皆様や賃貸経営をされているオーナー様としては、基本的な知識として押さえておくべき点が多数あるかとおもいます。

改正後に問題となってから対応しては遅い部分もありますので、未対応の方はいまこそ早めの着手が必要だと思います。

上記の内容について少しでも不安を感じられるようでしたら、ぜひ、社内向けの民法改正勉強会の実施や、来年度以降開催する一新総合法律事務所・東京事務所の不動産業向け民法改正対応セミナーへのご参加についてご検討ください。


 本記事は2019年12月執筆時での法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。
 記事の内容については、執筆当時の法令及び情報に基づく一般論であり、個別具体的な事情によっては、異なる結論になる可能性もございます。ご相談や法律的な判断については、個別に相談ください。
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