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特殊清掃業者特有のクレームとその対策【弁護士が解説】

~特殊清掃業者特有のクレームとその対策~

はじめに

前回の記事では、遺品整理業特有のクレーム例とその対策について説明しました。今回は、特殊清掃業者特有のクレーム例とその対策について説明していきます。

特殊清掃業におけるクレーム要因

特殊清掃業におけるクレームを知るためにも、やはり特殊清掃業特有の「クレーム要因」を知ることが重要となります。特殊清掃業における「クレーム要因」は以下のようなものが挙げられます。

特殊清掃業が発展途上の業界であること

特殊清掃業のとは「遺体発見が遅れたせいで腐敗が進んでダメージを受けた部屋や、殺人事件や死亡事故、あるいは自殺などが発生した凄惨な現場の原状回復を手がける業務全般のこと(※1)」を指すものと言われておりますが、求められる業務の内容は極めて高度かつ専門的です。

そして、業務の性質上、完全な原状回復が不可能な場合があります。
(例えば、建物の構造部分にまで遺体の腐敗液がしみ込んでいる場合等)

しかしながら、これらの点について、お客様に広く理解されているとは言い難い面があります。

請け負う業務の内容を特定しにくいこと

2.1 特殊清掃業が発展途上の業界であること で述べたように、特殊清掃業は一口に言えば「原状回復業務」とはなりますが、実際に行う作業としては多岐に渡ります。
(遺体から出た体液(腐敗液)等により生じた汚染箇所の脱臭・撤去、床材の撤去、害虫駆除・殺虫処理、屋内の脱臭処理etc…)

特殊清掃を行う前提として、ごみの搬出(遺品整理)を行う必要性がある場合もしばしばございます。

この場合、外部業者との提携が絡み、請け負う業務の範囲が特定は難しいでしょう。

実質的にリフォーム業を行う結果となることもあり得ます。

また、遺品整理業と同様、事前の予測が難しいです。

料金や業務期間に関して認識の齟齬が生じやすいこと

✔️ 特殊清掃というのは非常にハードな仕事であり、人的負担が非常に大きい業務です。
(肉体面・精神面共に過酷)
✔️ 依頼が一時期(夏頃)に集中する傾向があることから、特殊清掃人は過密スケジュールとなりがち。
✔️ 業務の性質上、短期間での処理が要求される。

以上が、通常の原状回復(ハウスクリーニング)と比べ、高額となる要因ですが、この点について、お客様がきちんと理解していない場合が多いです。

どの時点で業務が「完了」となるのかが不明確であること

特殊清掃をきちんと行ったとしても、現場の状況によっては、完全な原状回復が不可能な場合。 (腐敗液が床下までしみ込んでいる、壁に臭いが染みついて取れない等)

場合によっては、全面リフォームが必要なケースもあります。

お客様の中には「特殊清掃業者に任せれば全部きれいにしてくれる」という安易な認識を持つ方もいます。

完全な原状回復が可能か、原状回復のためにどのような行為が必要か、実際に業務に取り掛からないと不明な場合が多いです。

「原状回復業務」一般的に業務の「完了」を特定しにくい業務ではありますが、以上のような事情から、特殊清掃業においては、特に「業務の完了」に関して争いとなりやすいものであるといえます。

業務の性質上、アフターフォローを要する可能性があること

建物の構造部分自体に汚損が生じている場合は、一度特殊清掃を行ったとしても、再度悪臭が発生することも。
🗣 業務の性質上、アフターフォローの可能性を完全に排除することが難しい場合があります。
アフターフォローの必要性が生じた場合に「業務がきちんと行われなかった」のか「現場の状況からみてアフターフォローの可能性を完全に排除できなかった」のかがお客様からは分からない。

🗣 依頼者は、一度の特殊清掃で原状回復は終了したものと思いがち。

これらの事情から、「アフターフォローの可能性」自体が大きなクレーム要因があります。さらに、依頼者本人だけでなく、場合によっては近隣住民からのクレーム要因となり得ます。(特に集合住宅における特殊清掃の場合等)

事前の見積もりを十分に行えない場合があること

✔️ 特殊清掃は、業務の性質上、見積もり即依頼(ミソク)となる事が非常に多い。
✔️ お客様(親族やオーナー等)としても、迅速な処理について強い要望がある。

🗣 これらの点から、見積もりに十分な時間をかけることのないまま業務に入らざるを得ない場合もしばしば生じます。
✔️ 孤独死等の場合、遺族が疎遠なことが多い。

🗣 従前の本人の生活状況が不明な状態で業務に入らざるを得ない可能性もあります。

そもそも、ゴミ屋敷化している場合は、見積り自体を行うことが難しいです。

以上のような事情から、特殊清掃業の費用に関しては、業務完了後清算(追加料金の徴収)の形になりがちです。

そして、費用の後払い(追加料金の徴収)は、それ自体がクレームの要因を内在しているといえます。

特殊清掃業における具体的なクレーム例及びその対策

【クレーム例その1】(原因①、④)
『まだ汚れやにおいが残っているので、続けて業務を行ってほしい』

【対策】
① 業務内容は「完全な原状回復」を補償するものではないことを説明。
→同意書を取得できるとベストです。
② 作業内容とその効果(大まかな程度でよい)を示す。
③ 対応可能な作業とそうでない作業を事前に明示する。
④ 作業完了後、お客様に現状を確認いただいたうえで、「現状(確認日の現状)をもって作業が完了したことを確認します」旨の書面(業務完了確認書)に署名してもらう。

【クレーム例その2】(原因①、⑤)
『特殊清掃を行ってもらったが、再度悪臭等が生じた』

【対策】

事前に、部屋の状況によっては完全に悪臭等を除去しきれない場合もある旨をきちんと説明する。
→「完全な原状回復を保証するものではない」旨の同意書等を取得するとベストです。

オプションでアフターフォローを組み込んでおき、それ込みの料金設定を行う。
→この場合には「アフターフォローの内容」「その対応回数(もしくは月数)」をきちんと明示しておく必要があります。


【クレーム例その3】(原因②、③、⑥)
□ 『なぜこんなに高くつくのか』
□ 『ネットで調べたらもっと相場は安かった』

【対策】
見積書を作成する。
→費目だけでなく、業務内容やそれに要する時間、単価等についても明確なものが良いでしょう。

各業務内容についての説明を徹底する。(特に遺体の腐敗が進んでおり、高額な費用を要することが予測される場合)
→特に「ミソク」の場合に関しては、費用面につき事前にきちんと説明しておく事が必要でしょう。

webサイト等で、過去の事例を、部屋の構造や死体の状況、作業内容等に類型化したうえで、その際の業務内容の概要と費用を公開する。
→個人情報保護法の関係があるので、掲載の際は個人情報が特定されないように注意しましょう。

また、お客様にとってセンシティブな情報でもあるので、必ず事前に掲載許可を取得してください。(取得方法は、「業務完了確認書」に「今回の作業内容につき、個人が特定されない形で、御社webページに掲載することを承諾します」といったチェックボックスを設け、そこにチェックを入れてもらう等の手段で取得することが考えられます。)


【クレーム例その4】(原因①、③)
『壁紙や畳等を新しく張り替えてはくれないのか』

【対策】

『特殊清掃業』と一般的な『リフォーム業』の違いを、業務内容と合わせて説明。
→「清掃」とあるが、部屋を直ちに利用できる状態に戻すわけではない、という点などが誤解を生じやすいですので、このあたりの説明を忘れないようにしていただければと思います。

リフォーム業務をオプション化
→これによって「標準業務に含まれないこと」が明確になります。

畳の新調や床の張替え等まで対応しているのか否か、という点はきちんと作業前に明確にしておく。
→汚損が明確である場合、「当然そこまで行ってもらえる」との認識をお客様が持ちやすいので、この点は作業前に明確にするよう心がけてください。


【クレーム例その5】(原因②、③)
『周辺から苦情が出ている。もっと早く業務を進めてくれないか』

【対策】

見積り提示の際に、おおまかな業務時間を提示。
→このとき「何に」「どれだけの」時間を要するか、という点(業務時間の内訳)まで提示できるとベストです。

webサイト等で、具体例に基づいた業務の所要時間を公開。(遺体が発見されてからの経過日数、死亡時期(季節)、部屋の広さ、屋内の状況等)
→こちらに関しても、事前にお客様から掲載許可の同意を取っておきましょう。

まとめ

特殊清掃業におけるクレーム例とその対策について、その一部につき以上のとおり紹介しました。最後に、遺品整理業と同様に、特殊清掃業に関するクレーム対応について、まとめを行います。

特殊清掃に関するクレームも、遺品整理と同様以下の2点に起因します。

「業務に関するお客様の理解の乏しさ」
「業者とお客様の共通認識の不存在」

遺品整理と比べ、緊急の依頼・対応を余儀なくされることが多いため、情報格差を埋めるための事前の対策(業務の事前説明や、webサイト等における業務過程や費用、所要日数等の公開等)がより重要となります。

特殊清掃に関しては、事後的なクレームが業務の性質上出やすいので、この点に関しては特に注意を払う(アフタ-フォローの対応等)こと。

契約書・見積書の作成が重要なのは遺品整理と同様です。

完全な原状回復を保証するものではない」旨の同意書を取ることは特に重要です。

※1…菅野久美子「超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる」(毎日新聞出版・2019)より引用

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