遺品整理・特殊清掃業における適切なごみ処理その1
目次
遺品整理・特殊清掃業の適法なごみ処理の注意点
遺品整理業(特殊清掃業)を行うと、お客様の元に残される「遺品」と、お客様が処分を要望される「ご不要物」に分かれます。このような「ご不要物」に関しては、リサイクル可能な物や売却可能な物につきましては「ごみ」として処分せざるを得ません。
遺品整理業(特殊清掃業)を進めるにあたり、不可避的に生じる「ごみ」について、適法に処理するために、業者としてどのような点に気を付けるべきでしょうか。
本記事では、まず遺品整理業(特殊清掃業)における「ごみ」の性質とそれにまつわる各種規制について、解説いたします。
遺品整理業(特殊清掃業)の「ごみ」は何に該当?
ごみ(法律上は「廃棄物」と総称されます)の処理については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(いわゆる廃棄物処理法。以下「廃掃法」といいます。)」という法律によって規制されています。
廃棄物処理法においては、廃棄物の種類として、大きく分けて「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分かれます。
(法律上の立て付けとしては、「産業廃棄物」に関する定義があり(廃掃法2条4項)、「産業廃棄物」に該当するもの以外の「廃棄物」はすべて「一般廃棄物」に該当します(廃掃法2条2項))。
そして、遺品整理業(特殊清掃業)の際に生じるごみ(廃棄物)に関しては、原則として「一般廃棄物」に該当します。
産業廃棄物に該当するといえるためには「事業活動に伴って」生じたといえる必要がありますが(廃掃法2条4項1号)、遺品整理業(特殊清掃業)を進める際に処分される廃棄物は、元々はお客様(もしくは、お亡くなりになられた方)のご家庭から発生したごみ(廃棄物)であるためです。
遺品整理業(特殊清掃業)の「ごみ」処理で必要な許可とは?
既に説明したように、遺品整理業(特殊清掃業)において生じる「ごみ(廃棄物)」は、原則として、法律上「一般廃棄物」に該当します。
そして、「一般廃棄物」の処理に関しては、その処分だけでなく「収集・運搬」について地方自治体(正確にはその長)の許可が必要となります(廃掃法7条1項本文)。
遺品整理業(特殊清掃業)との関係でいえば「お客様のご自宅からごみ処理場にごみ(廃棄物)を運搬する」という作業を行う際に「一般廃棄物の収集運搬の許可(一廃許可)」を取得しておく必要がある、というわけです。
(なお、許可は「収集運搬を行う区域ごと」に必要となります。A市において一廃許可を得ていたとしても、B市で(一般)廃棄物の収集運搬を行う際には、B市から別途許可を得る必要がある、ということになります)。
そして、この点が最も問題なのですが「一廃許可」に関しては、全国ほぼすべての地域において新規業者の許可取得が認められていない、という状況になっております(詳細は、次回の記事で詳しく説明します)。
今回の記事では、遺品整理業(特殊清掃業)において生じる「ごみ」の法的性質とそれに関する規制について説明しました。次回の記事では遺品整理業(特殊清掃業)において「ごみ」を適法に処理するにはどうすべきか、という点について説明します。
〔補足1〕「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に関する許可の違い
上記のとおり、法律上「一般廃棄物」と「産業廃棄物」は明確に区別されています。それに伴い「一般廃棄物」に関する許可と「産業廃棄物」に関する許可は別物であり、根拠規定も異なります。
したがって「産廃許可」は「一般許可」の代わりになるわけではなく、「産廃許可」を持っていても、「一廃許可」が必要な業務(遺品整理で発生したごみの運搬)が許容されるわけではありません。この点について、ご注意ください。
〔補足2〕「産業廃棄物」としてごみを処理することはできない?
遺品整理のごみ処理方法について、インターネット等で調べると「業者自身で一旦ごみ(廃棄物)を引き取るという形を取れば、産業廃棄物として処分できます」といったことが説明されています。
【詳細は次回の記事で説明予定ですが、産業廃棄物の収集運搬許可(産廃許可)は、一廃許可と比べると取得が容易なので、このような解決策が提示されているのではないか、と推測されます】
しかしながら
・「一般廃棄物」か「産業廃棄物」かの判断は、排出元が誰かという点が大きな要素となる
以上の点を踏まえますと、遺品整理の結果、処分することとなった「ごみ」はその時点で「一般廃棄物」という扱いを受け、それを遺品整理業者が引き取っても「一般廃棄物」のままとなります。
また、「ごみ」を含む「ご不要物」をすべて古物として売却する前提で引き取る(購入する)という形をとれば、売れ残りの品については「産業廃棄物」として処理できる、という説明がなされることもあります。
こちらについては
・仮に「古物」と認められるとしても、売れ残りの物品が必ずしも「産業廃棄物」となるわけではない
以上のような点から、上記のような方法をとっても「産業廃棄物」として処理できるわけではありません。ご注意くださいませ。
* 本記事は2020年7月執筆時での法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。