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賃借人の破産した場合に賃貸借契約が解除できるか。

弁護士による不動産管理会社向け法務情報

 ・当社の管理物件の賃貸マンションで、賃借人が破産手続を採っている。支払能力に不安があるので、契約を解除することはできるか。賃貸借契約書を確認したら、賃借人が破産した場合には、契約を解除できると記載されている。
 

結論

契約書に記載があったとしても、破産手続を採ったというだけでは解除できない。

ただし、賃料不払が続くようであれば、解除することはできる。

管理会社や物件のオーナーとしては、破産の事実が分かった場合には、賃料をしっかり支払ってもらえるのか、という不安が生まれます。集客が容易な物件なのであれば、解除を選択肢に入れたいと思うことも理解できるところです。

ところが、法律上は、賃借人の破産を理由として解除することはできないと考えられます。賃貸借契約書に、賃借人が破産した場合には解除できる、という記載があったとしても、です。

この点に関して説明すると、よく契約書を確認している不動産管理会社の担当の方からは「契約書に明確に賃借人が破産した場合に解除できる」と記載されているではないか、それなのに解除することはできないのですか、という指摘を受けることがあります。ですが、残念ながらできないと考えられます。

賃借人の破産を理由とする解除については、すでに古い借地借家法である借家法の時代に、最高裁判決が下されています。

内容は、「建物の賃借人が、破産宣告の申立てを受けたときは、賃貸人は直ちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は、賃貸人の解約を制限する借家法1条の2の規定の趣旨に反し、賃借人に不利なものであるから同法6条により無効と解すべきである」といった内容です。

(最高裁昭和43年11月21日判決、最高裁判所第1小法廷判決/昭和42年(オ)第919号)

こちら旧借家法の判例ではありますが、旧借家法1条の2は、借地借家法28条に、旧借家法6条は、借地借家法30条にそれぞれほぼ同趣旨で受け継がれています。ですので、この最高裁判決は今でも受け継がれていると考えられます。

そのため、いくら賃貸借契約書に賃借人が破産したときに解除出来るという記載があっても、このケースでは無効と解釈されると思われます。そうなると、賃借人の破産は解除事由になりませんから、解除することができないことになります。

以上のとおりですが、もちろん賃借人が、賃料の支払いを複数月に渡って滞納したような場合には、解除できます。こちらは、破産が原因ではなく、賃料不払いが原因である解除となります。

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【参考】旧借家法 

第一条ノ二

建物ノ賃貸人ハ自ラ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ非サレハ賃貸借ノ更新ヲ拒ミ又ハ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得ス

第二十八条 

建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

 旧借家法 第六条

前七条ノ規定ニ反スル特約ニシテ賃借人ニ不利ナルモノハ之ヲ為ササルモノト看做ス

(強行規定)

第三十条 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
 

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