政府が土地を放棄できる制度の検討を始める
政府が、土地の所有権を放棄したいときに放棄できる制度の構築を検討し始めたとの報道がされています。
これまでは、土地といえば重要な資産であったものですが、近年では、地方の土地を欲しがる人は減り、むしろ、固定資産税の負担や維持管理の手間などから、「ただであげる」と言われてもいらない、という人が増えていると言われています。(負動産)
ちなみに、私は、弁護士として業務を始めて11年目になりますが、これまで法律相談等で土地の所有権を放棄したいという方の相談を受けたケースは、1度や2度ではありません。
ご相談としては、全く利用していない土地で売却の見込みもなく、それでいて毎年一定額の固定資産税を支払わなければならないので放棄したい、というのが典型です。
相続放棄により土地だけ放棄できないか、と言われるケースもありますが、相続放棄は、被相続人の財産を全て相続するか、全て相続しないかという選択であり、財産を選り好みして承継することはできません。
なので、全ての預貯金やその他の財産も含めて全ての財産が必要ないという場合はよいのですが、相続放棄により特定の土地だけを放棄することはできません。
相談者の方によってはインターネット等で色々と調べて、自治体などに寄付できないか、などと悩まれる方も多いのですが、実際のところ、よほど条件が整わない限り自治体が寄付を受け入れることはないようです。
まあ、所有者ですら放棄したいという土地ですから、自治体にとっても利用価値が見い出しにくく、むしろ、固定資産税等の税収減に繋がりますから、やむを得ないところと思われます。
実際には、条件に恵まれていれば隣地所有者などに引き取ってもらえるかどうか、というケースが多いものと思われます。
そうなると、今回の土地放棄制度については期待がかかります。が、問題となるのは、どのような条件で土地を放棄することができるようになるのか、といったところです。
この点については、これからの検討課題となるのでしょうが、社会全体での土地活用という観点、一方で固定資産税の税収に与える影響などからすると、対象となる土地に限定があったり、あるいは、放棄にあたって一定の金銭を支払わなければならなくなるなどの制度設計もありうるところと思われます。
弁護士:大橋