共有不動産の解決~遺産分割の問題
遺産分割が完了していないという場合も、共有不動産に関する問題の一つといえるでしょう。
遺産分割の問題というのは、たとえば父母と子ども3人がいる場合に、父親が亡くなり、その亡くなった父親の持っていた不動産や預貯金などの財産(相続財産と呼びます)を、残された母と子ども3人で、誰が何を相続するかを決めることを言います。
遺産を相続することになる者たち(この例でいうと、母と子3人)の全員の話し合いで話がまとまり、誰がどの不動産を相続するのかが決まればよいのですが、決まらないままであったり、不動産などがあるのに協議しないままとしていると、民法898条は「相続人が数人あるときは,相続財産は,その共有に属する。」と定めているとおり、相続財産である不動産は相続人の共有となります。
ですので、人が亡くなって相続が発生し、遺産分割が終わっていない場合には、共有不動産の問題(遺産分割の問題)が生じているといえます。
ですが、共有不動産の場合といっても、一般的な共有不動産の場合とは異なり、この相続により共有状態が生じている場合には、分割するためにすぐに共有物分割訴訟を行うことになるわけではありません。
相続により共有状態が生じた場合、それは親族間の問題です。
遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所で調停の手続に進むことになるのが通常です。共有物分割訴訟は地方裁判所で行われますが、遺産分割の場合には、家庭裁判所で調停による話し合いから始められます(なお、いわゆる離婚調停などとは異なり、遺産分割調停は、法律上の調停前置ではなく、遺産分割審判から求めることも理屈上は可能ですが、親族間での話し合いによる解決が望まれることから、審判として申立てても調停に付されることが通常のように思われます。)。
したがって、ここまでをまとめると以下のような流れとなります。
- 相続人の話し合いによる解決
- 弁護士などが代理して相続人同士で交渉することによる解決
- 家庭裁判所において調停(話し合い)による解決
- 家庭裁判所で裁判所が結論を出す審判による解決
このような順序を経て、遺産分割における共有不動産の問題は解決されていくのですが、このような手続は少なくとも相続人の誰かが遺産分割の問題を解決しようという姿勢を持って話を進めていくことが必要です。
そのまま問題を棚に上げておいても、裁判所が介入して遺産分割の問題を解決してくれるわけではありません。
一方で、遺産分割の問題は親族間の問題であり、とことんこじれている場合もあれば、親族とはいいながらもあまり縁のない親族で連絡が取りにくいといったケースまで様々です。
ケースに応じて、弁護士が関与することで、一番スムーズに問題を解決するように力を発揮できる場合も少なくありません。
遺産分割にかかる共有不動産の問題でお悩みの方は、ぜひ早めに経験ある弁護士に相談されることをお勧めいたします。
* 本記事は2019年6月執筆時での法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。
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