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オーナー様がしてはならないこと|賃料滞納・建物明渡の法律相談

自力救済という用語を聞いたことがあるでしょうか。

民法414条は「履行の強制」との見出しで、第1項にて、「債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者はその強制履行を裁判所に請求することができる。」と定めています。

強制的に債務の内容を実現する方法を定めた規定ですが、「裁判所に請求することができる。」との文言があるとおり、裁判所への請求を行わずに、自力で債務の内容を実現してしまうことはできないのです。

言い換えれば、賃借人が借りている物件の賃料も払わない場合や、契約が終了しているのに出ていかない場合、賃借人は賃料支払債務であったり、目的物(物件)返還請求債務を履行していないということになりますが、これに対し強制的に賃料を回収したり、物件から立ち退いてもらったりするというのは、裁判手続を経なければなりません。

もう少し、実際のケースに近づけて説明すると、最近では定着しつつありますが、賃料の支払いを滞納している賃借人の住戸に対して、無断で鍵を変えてしまったり、業者を使って、部屋の中に残されている物を搬出してしまったりしてはいけません。

これらは、典型的な自力救済として禁じられている行為になります。

特に、部屋の中に勝手に入ってしまう行為などは、住居侵入として刑法上問題となる可能性すらある危険な行為と考えた方がよいでしょう。

次に、賃借人が行方不明となり、駐車場には車両が放置され、部屋の中には私物が残されている場合はどうでしょうか。

この場合も同様に、裁判所に対する手続を経なければ自力執行として違法な行為との評価を受けてしまうことになります。

もう一つ時折見かける契約書の条項にまつわる自力救済の例を紹介します。

こちらは、賃貸借契約書締結時において、賃貸借契約書に、「賃貸借終了後、借主が本件建物内の所有物件を貸主の指定する期限内に搬出しないときは、貸主はこれを搬出保管又は処分の処置をとることができる。」といった条項が置かれていたので、契約書の文言に従って、賃貸借契約終了後、賃貸人側が賃借人の私物を運び出したといった事例です。

法律上は自力救済ができないことは分かったが、当事者(賃貸人と賃借人間の賃貸借契約)で合意しているのであれば、私的自治(契約自由)としていいのではないか。といった視点がポイントになります。

こちらのケースですが、まさにこの点が争われた裁判例(東京高等裁判所平成3年1月29日判決 平成元年(ネ)第3350号 )があります。

このように当事者間で合意されていたとしても、東京高等裁判所は自力救済に該当するものとして、賃借人に無断で賃借人の私物を搬出し処分した賃貸人側の行為を違法だと判断しました。

そうすると、賃貸借契約書にこのような条項があったとしても無効なのだと思われそうなものですが、東京高等裁判所は、賃借人が任意に物件から退去した後における残された賃借人の私物の搬出や処分について合意した条項であれば効力を有すると判示しています。

少し、説明を加えると、①物件から賃借人を立ち退かせるという部分と、②賃借人の所有動産を処分するという部分を分けて考えているというべきでしょう。

①の部分である賃借人を物件から立ち退かせるには、理由がどうあれ、冒頭で触れたように裁判手続を経なければなりません。

他方で、②の部分である賃借人が所有動産をどう処分しようとそれは裁判手続が不要で、自由に行ってよいということになります。

ですので、今回のような契約書の条項で、賃借人が①まで承諾したという解釈をすることはできないけれども、②の承諾をしたという解釈はできる。

まとめると、①の部分が解決した後であれば、契約書の条項には問題がないのであるから、賃借人が任意に立ち退いた後(①が解決した後)という条件の下、「賃借人が任意に物件から退去した後における残された賃借人の所有動産の搬出や処分について合意」した条項として判断するという結論になったということになります。

また、かなり限られたものではありますが、「緊急やむを得ない特別の事情」がある場合には、自力救済を行える場合もあります。こちらは、最高裁判所の判例(最高裁判所昭和40年12月7日判決 昭和38年(オ)第1236号)にて例外的に自力救済を行える余地を容認したことを明示した判決としてしばしば登場します。

しかし、このような場合にあたると判断されるケースは極めてまれですし、仮にそのような事情がある場合であっても、賃借人側と自力救済が可能であったかどうかについて意見が割れ、裁判手続を経なければならなくなることが容易に想定されます。

そうなると、当初より物件の明渡しの訴訟を提起しておいた方がよかったということにもなりかねません。

部屋から火事が発生した場合やそれに匹敵するような緊急事態がある場合に消火のため部屋に立ち入った場合などが考えられますが、いわゆる賃借人の賃料不払いなどから立ち退いてほしいという場合でこの最高裁の判決を使える余地というのはほぼなさそうです。

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