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2024.03.25
コラム

【弁護士解説】不動産会社は理解しておきたい賃料増減額請求-part3-

コラム著者

弁護士  栃原 遼太朗

東京事務所所属

不動産・建築紛争の取り扱いに注力。不動産管理業向け法改正セミナーなど、数多くのセミナー講師を担当。

【講師履歴】株式会社Century21・Japan様主催 「改正個人情報保護法改正セミナー」/弊所主催 「入居者トラブル対応セミナー」 etc.

              

はじめに

今回は、不動産賃貸借における賃料増減額請求に関するコラムの3回目の記事となります。

前回の記事では、借地借家法上の賃料増減額請求が適用される対象・契約類型について解説しました。

今回の記事では、「賃料の不相当性(相当賃料)」の具体的な判断手法について解説していきます。

相当賃料の判断の流れについて

交渉の開始

賃料増減額請求については、まず賃貸人・賃借人いずれかの申入れ(請求)によって交渉が開始されます。

通常は当事者間での交渉を行った上で(弁護士等代理人を介しての場合も含みます)、協議がまとまらない場合は裁判所が関与する手続きに進みますが、賃料増減額請求については、訴訟提起前に、調停の申立てをしなければなりません(民事調停法24条の2第1項)。

調停の申立てをせずに訴訟を提起した場合は、原則として裁判所により調停に付されます(同条2項本文)[1]

調停

調停では、当事者双方の主張を踏まえ、当事者間の合意に基づく調停の成立を目指しますが、調停成立の見込みがない場合でも、裁判所が相当と認める場合には、当事者の主張の趣旨に反しない範囲で、必要な決定(調停に代わる決定)を下すこともあります(民事調停法17条)。

訴訟

調停が未成立、もしくは調停に代わる決定が下されたものの、期間内に当事者いずれかから異議が申し立てられた場合は、訴訟に進み、その中で、相当賃料について、裁判所が判断を下すこととなります。

[1]  ただし、裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときには、調停に付さずに訴訟の審理が開始されることもある(民事調停法24条の2第2項ただし書)。

相当賃料の判断基準

継続賃料の試算方法

裁判所による相当賃料の判断基準については、不動産鑑定評価基準の継続賃料を求める考え方が一つの参考とされています。

継続賃料の試算方法については、①差額配分法(差額配分賃料)②利回り法(利回り賃料)③スライド法(スライド賃料)④賃貸事例比較法(比準賃料)の4手法が挙げられますが、これら一つを原則とするというものではなく、具体的な事実関係に即して、総合的な判断の上で相当賃料を確定すべきものとされています(総合方式・最判昭和40年11月30日集民81号237頁、最判昭和43年7月5日集民91号623頁等)。

総合方式による相当賃料の判断の流れは、次の手順によります[2]

 ①4手法のそれぞれについて必要とされる資料を収集する

 ②資料によって試算賃料を導くことが可能な手法につき、試算賃料を算出する

 ③算出した試算賃料について、それぞれの試算賃料の特色を考慮・斟酌して、加重割合(ウェイト付け)を検討する

 ④試算賃料を加重平均して、結論を導き出す[3]

第三者鑑定

上記で説明したような判断基準が、裁判所が採用する相当賃料の判断基準ですが、相当賃料について争いが存在する場合は、裁判所により不動産鑑定士が鑑定人として選任され、不動産鑑定評価書を作成のうえ、同資料に基づいて判断がなされることも多いです(第三者鑑定)。

このような第三者鑑定が実施された場合は、裁判所の判断は、同鑑定に基づくものとなる傾向にあるところです[4]

私的鑑定

一方で、賃料増減額請求の審理にあたっては、当事者が不動産鑑定士等に依頼のうえ、相当賃料に関する査定・鑑定資料が提出されることがほとんどです(私的鑑定)。

このような資料も、調停や訴訟等において、参考資料とされないわけではなく、和解や調停成立に関する協議の基礎資料として一定の意味を持つものではありますが、裁判上における相当賃料の算定に当たっては、私的鑑定は必ずしも中立的なものと取り扱われるわけではありません。

[2]  渡辺晋「建物賃貸借(改訂3版)」(2022・大成出版社)p286

[3]  試算賃料については、均等なウェイトで按分することもあります。

[4] 第三者鑑定については、「当事者と利害関係を有しない中立公正な立場にある裁判所鑑定人が、その専門的な知識経験に基づき、継続資料の適正額を鑑定評価したものであるから、一般的に信用性が高い」ものとされています(神戸地判平成30年2月21日判決)。

相当賃料の立証

また、相当賃料の立証について、費用の観点から、一方当事者が鑑定資料を提出する一方で、他方当事者は(簡易)査定資料の提出に留まる、ということもみられます。

上記の通り、一方当事者の提出資料は、必ずしも中立的なものとして取り扱われるわけではありません。そのため、このような場合に、必ずしも鑑定資料が相当賃料の参考資料として優先的に採用されるわけではありません。

おわりに

今回は、賃料増減額請求における中核的な判断ともいえる、相当賃料の判断基準について説明しました。

相当賃料の判断それ自体は法律とは別の、不動産に関する専門的知見が必要なものであり、不動産鑑定士等の関与が必須といえます。

一方で、裁判所における相当賃料の判断にあたっては、資料の精度のみならず、鑑定士の中立性についても、相当賃料の判断については重要な影響を与えるものといえるでしょう。

次回の記事では、「賃料増減額請求の特約の適法性・判断に与える影響」について説明する予定です。


(参考)継続賃料の試算に関する4手法の概要[5]

  •  差額配分法(差額配分賃料)

 当該建物および敷地の経済価値に即応した適正な家賃と実際の支払額との差額について、契約内容、契約締結の経緯等を総合的に勘案して当該差額のうち貸主に帰属すべきものと判断される部分・額を従前の支払家賃に加算して算出する方法

  •  利回り法(利回り賃料)

 建物とその敷地価格に期待利回りを乗じて得た純賃料に必要経費(減価償却費、修繕費、維持管理費、公租公課等)を加算して算出する方法

  •  スライド法(スライド賃料)

 従前の家賃を基準として、その後の経済変動の指数(たとえば物価指数、家賃地代の変動指数等)を乗じて算出する方法

  •  賃貸事例比較法(比準賃料)

 近隣の同種同等の賃貸事例における家賃の相場と比較し個別要因による補正を施して算出する方法

[5]  稻本洋之助・澤野順彦 編「コンメンタール借地借家法(第4版)」(2019・日本評論社)p274

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