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2023.03.02
2023.03.06
コラム

【弁護士解説】不動産会社は理解しておきたい賃料増減額請求-part2-

コラム著者

弁護士  栃原 遼太朗

東京事務所所属

不動産・建築紛争の取り扱いに注力。不動産管理業向け法改正セミナーなど、数多くのセミナー講師を担当。

【講師履歴】株式会社Century21・Japan様主催 「改正個人情報保護法改正セミナー」/弊所主催 「入居者トラブル対応セミナー」 etc.

              

はじめに

前回のコラムでは、借地借家法上定められた賃料増減額請求の要件である考慮要素について解説しました。

今回は、借地借家法上の賃料増減額請求が適用される対象・契約類型について解説します。

賃料増減額請求の対象

①敷金・礼金(保証金)

敷金・礼金(保証金)は、原則として賃料増減額請求の対象とはなりません。

敷金については、「賃貸借契約上生じる、賃借人の賃貸人に対する債務の担保」目的の預り金であります。

また、礼金については「賃貸借契約の合意に至った点に対する謝礼」と一般的に考えられており、「賃借物件の使用の対価」である家賃(賃料)とはその性質自体が大きく異なるためです。

敷金(民法第622条の2)

賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。

②更新料

更新料の法的性質については「更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するもの」と考えられています(最高裁平成23年7月15日判決)。

以上の法的性質を踏まえると、更新料が賃料増減額請求の対象となるのか否か、という点はケースバイケースになります。

ただし、多くの賃貸借契約においては、更新料の記載につき「賃料の1ヶ月分」といった形で、賃料額を前提とした記載になっています。

この場合は、賃料が変動すれば当然に更新料の金額も変動するので、賃料増減額請求の行使後に生じた更新料については、変動後の賃料に応じた金額となります。

③管理費・共益費

管理費・共益費の性質は、「賃貸建物の(共用部分をはじめとする)管理維持費用」と考えられています。

前回のコラムでも触れましたが、これらの費用は、借地借家法上定められた賃料増減額請求の対象となる「借賃(家賃)」とは異なりますが、これらの金銭に変動が生じた場合も、実質的に家賃と同じ性格のものとして、上記規定を類推適用し得る(増減額請求権を行使し得る)ものとされています。

賃料増減額請求が適用される契約類型

①サブリース事業における賃貸借契約

サブリース事業における賃料増減額(特に減額)請求について、そもそも請求が可能か否か、という点で法律上の争いがあり、社会問題にもなりました。

ただ、平成15年に相次いで出された最高裁判決(総称して「最高裁平成15年サブリース判決」と呼ばれるものとなります。)により、サブリース事業における賃貸借契約(マスターリース・サブリースいずれも)について、借地借家法が適用されることが明確になりました。

また、多くのサブリース契約には賃料自動増額特約が付されていましたが、最高裁平成15年サブリース判決(補足意見)の中で以下のように判示され、このような特約が付されていたとしても、賃料減額請求権の行使が可能であることが明確になりました。

特定賃貸借契約の締結前の書面の交付(賃貸住宅管理業法第30条1項)

特定転貸事業者は、特定賃貸借契約を締結しようとするときは、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者(特定転貸事業者である者その他の特定賃貸借契約に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者として国土交通省令で定めるものを除く。)に対し、当該特定賃貸借契約を締結するまでに、特定賃貸借契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならない。

特定賃貸借契約の締結前の説明事項(賃貸住宅管理業法 施行規則第46条の14)

法第三十条第一項の国土交通省令で定める事項は、次に掲げるものとする。

借地借家法(平成三年法律第九十号)その他特定賃貸借契約に係る法令に関する事項の概要

②オーダーリース型の賃貸借契約

オーダーリースとは、商業施設や店舗などを運営する賃借人が建物の仕様を指定し、賃貸人(土地の所有者や賃貸事業者)が指定に基づく建物を建築して、賃借人に建物を賃貸させる賃貸借 です。

大型小売店舗、チェーン店やスポーツ施設等の運営においてしばしば利用されている方式の契約ですが、「通常の賃貸借契約とは異なる(具体的にいえば、事業受託の一環であるといえるため)」という点を指摘し、借地借家契約が適用されない(すなわち、特約等の記載がない限り、賃料増減額請求はできない)とされています。

ただ、このような契約についても賃料増減額請求を可能とする判例が出されたこともあり、現在では一般的に賃料増減額請求が可能であるものと考えられています(最高裁平成17年3月10日判決)。

③売上歩合型の賃貸借契約

賃貸借契約の一種として、商業施設の賃貸において利用される、売上歩合によって賃料を決める方法(売上高と連動させて歩合によって賃料を決める方式(スライド方式))での賃貸借契約というものが存在します。

上記スライド方式には、賃料全額を売上高に連動させる完全売上歩合賃料制(全面スライド)と、賃料の一部を固定し、加算部分を売上高に連動させる併用型賃料制(部分スライド賃料)の2つがあります。

この点については、スライド方式による賃料の設定は、いわば営業利益の分配の定めにあたるため、仮に併用型賃料制(部分スライド賃料)の方式であったとしても、借地借家法上の賃料減額請求の適用を受けない、という見解もありましたが、このような契約でも借地借家法の適用を受けうると考えられています(最高裁昭和46年10月14日判決)。

そのため、併用型賃料制(部分スライド賃料)における固定賃料部分は、賃料増減額請求の対象となると解されています。

ただし、このような賃料決定方式を取った、という事実それ自体は「賃料の不相当性」判断における重要な考慮要素となります。

おわりに

今回は、賃料減額請求の適用の対象、契約類型に説明しました。特約の有無等にかかわらず、広く賃貸借契約の形式をとるものには適用がある、という点はご注意ください。

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