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2022.10.24
2022.12.08
法改正

ルール変更!所有者不明土地に関する法改正-民法-

所有者不明土地に関する法改正-民法-
コラム監修者

一新総合法律事務所 東京事務所

東京弁護士会所属

不動産会社を中心に、不動産オーナー、不動産に関連するサービスを提供する企業のトラブル/法律相談を対応しています。年間990件以上(2021年実績)の不動産に関する相談を扱ってきた実績から、不動産分野の各種法律相談や契約書作成等幅広く対応が可能です。


所有者不明土地問題に関連して、既存の法制度の改正が行われます。

前回コラム「ルール変更!所有者不明土地に関する法改正-不動産登記法-」では、相続登記の申請の義務化といった不動産登記法の改正について確認しました。

今回は、民法の改正について一つずつ確認していきましょう。

土地・建物に特化した財産管理制度の創設(令和5年4月1日施行)

現行の不在者財産管理人・相続財産管理人は、人単位で財産全般を管理する必要がありますが、負担が大きく非効率なものとなっています。

所有者が判明している場合でも同様ですが、管理が行き届いていないことや管理がされていない土地も多いのが現状です。

管理不全状態の土地・建物は民間取引や公共事業を妨げていたり、近隣住民を危険な状態にさらしていたりします。

そこで、管理不全および所有者不明の土地・建物を適切に管理するための制度が創設されます。

これにより、財産単位(個々の土地や建物ごと)に特化した形での財産管理制度の利用が可能となりました。

管理不全状態にある土地・建物の管理制度(民法 令和5年4月1日施行)

① 所有者による土地の管理が不適当であることによって、他人の権利・法律上の利益が侵害される、またはそのおそれがある土地・建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、当該土地・建物の管理をする管理人を選任してもらうことができる(新第264条の9第1項、新第264条の9第3項、新第264条の14第1項、新第264条の14第3項)。

選任された管理者は当該土地・建物の保存・利用・改良行為を行うことが可能であり、さらに当該土地・建物にある動産を管理・処分する権限を有する(新第264条の9第2項、新第264条の14第2項、新第264条の10第1項、第2項)。
また、所有者の同意(及び裁判所の許可)があれば、土地・建物の処分(売却、建物の取壊し等)も可能である(新第264条の10第3項)。

所有者不明土地・建物の管理制度(民法 令和5年4月1日施行)

①調査を尽くしても所有者等が不明な土地・建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、当該土地・建物の管理をする管理人を選任してもらうことができる(新第264条の2第1項、新第264条の2第4項)。

選任された管理者は当該土地・建物の保存・利用・改良行為を行うことが可能であり(新第264条の3第2項)、当該土地・建物にある動産を管理・処分する権限を有する(新第264条の2第2項、新第264条の8第2項、新第264条の3第1項)。 
また、裁判所の許可があれば、土地・建物の処分(売却、建物の取壊し等)も可能である(新第264条の3第2項)。

管理人は、事案に応じて、弁護士・司法書士等のふさわしい者が選任されます。

裁判所により選任された選任された適切な管理人が管理することで、近隣住民等は、破損が生じている擁壁や補修工事、ゴミの撤去・害虫の駆除についても依頼できることになります。

また、管理人は裁判所の許可(管理不全土地の場合はこれに加えて所有者の同意)があれば所有者不明土地の売却も可能になるため、民間取引や公共事業の活性化につながります。

共有制度の見直し(令和5年4月1日施行)

相続登記の未了により所有者が不明化した土地の多くは、相続人による共有状態となっています。

共有状態にある不動産について、所在等が不明な共有者がいる場合、その利用に関する共有者間の意思決定や持分の集約が困難になるため、所有者不明土地・建物と同様に民間取引や公共事業の妨げになります。

そこで、共有物の利用や共有関係の解消をしやすくするため、共有制度全般について見直しが行われます。

共有物を利用しやすくするための見直し(民法 令和5年4月1日施行)

・共有物の管理行為及び軽微な変更は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決定する(新第251条第1項、新第252条第1項)。

・所在等が不明な共有者がいる場合、他の共有者は地方裁判所に申し立て、裁判所の決定を得て、
①所在等が不明な共有者以外の共有者全員の同意により、共有物を変更できる(新第251条第2項)。
②所在等が不明な共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定できる(新第252条第2項の1)。

共有関係の解消をしやすくするための新たな仕組みの導入(民法 令和5年4月1日施行)

所在等が不明な共有者がいる場合、他の共有者は地方裁判所に申し立て、裁判所の決定によって所在等が不明な共有者の持分の取得や、第三者への譲渡が可能になる(新第262条の2第1項、新第262条の3第1項)。

上記の所在等が不明な共有者の持分の取得や第三者への譲渡は、当該持分が相続財産に属する場合は、相続開始の時から10年を経過していなければなりません(新第262条の2第2項、新第262条第3項)が、現行法よりも格段に共有部の利用・処分を円滑に進めることができます。

遺産分割に関する新たなルールの導入(令和5年4月1日施行)

遺産分割がされないまま相続が繰り返されると、多数の相続人による遺産共有関係となります。

また、生前贈与を受けた者、療養看護等で特別の寄与をした者など個別の事情がある場合、相続発生時から長期間経過したことにより、具体的相続分に関する証拠等がなくなってしまい、遺産相続がより一層難しくなるといった問題があります。

その問題を解消するため、長期間経過後の遺産分割ルールが設けられます。

長期間経過後の遺産分割のルール(民法 令和5年4月1日施行)

【原則】
相続の開始(被相続人の死亡)から10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分または指定相続分によって画一的に行う(新第904条の3)。

【例外】
以下については、具体的相続分により分割を行う(新第904条の3)。
①相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求(申立て)をしたとき。
②相続開始の時から10年の期間満了前の6箇月以内の間に、遺産分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合、その事由が消滅した時から6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

また、民法改正の施行日(令和5年4月1日)前に被相続人が死亡した場合の遺産分割についても、新法のルールを適用します。

ただし、経過措置により5年間の猶予期間を設けることになっているため(改正附則第3条)、具体的相続分による分割の場合は早めの分割を行うことがポイントです。

相隣関係の見直し(令和5年4月1日施行)

隣地の所有者やその所在が調査をしても分からない場合、ライフラインの導管等を隣地に設置することや枝の切り取りに必要となる同意を得ることができず、土地の活用を阻害します。

この問題を改善し、隣地を円滑・適正に使用することができるようにする観点から、相隣関係に関するルールが見直されます。

隣地使用権のルール見直し(民法 令和5年4月1日施行)

【原則】
あらかじめ隣地所有者等に通知をして、以下の目的のために必要な範囲内で、隣地を使用することができる(新第209条第1項、第3項本文)。

・境界またはその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去または修繕
・境界標の調査または境界に関する測量
・竹木枝の切取り

【例外】
あらかじめ通知することが困難なときは、隣地の使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる(新第209条3項但し書)。
隣地所有者の所在が不明等の場合は、隣地所有者の所在が判明した後に遅滞なく通知することで足りる(第98条)。

ライフラインの設備の設置・使用権のルールの整備(民法 令和5年4月1日施行)

【設備設置権】
土地の所有者は、電気、ガスまたは水道の供給等のライフラインを自己の土地に引き込むために、必要な範囲で、 導管等の設備を他人の土地に設置できる(新第213条の2第1項)。

【設備使用権】
電気、ガスまたは水道の供給等のライフラインを自己の土地に引き込むことができない土地の所有者は、必要な範囲で、他人の所有する設備を使用することができる(新第213条の2第1項)。

越境した竹木の枝の切取りのルール見直し(民法 令和5年4月1日施行)

【原則】
越境された土地の所有者は、竹木の所有者に枝を切除させることができる(第233条第1項)。

【例外】
以下の場合は、越境された土地の所有者が越境した竹木の枝を切り取ることができる(新第233条第3項)。

・竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除しないとき。
・竹木の所有者が不明または所在が不明なとき。

現行法では、竹木の所有者が越境した竹木の枝を切除しない場合は裁判をする必要があったため、改正によって、越境された側の土地所有者の負担が大幅に軽減されることになります。

まだあります!所有者不明土地に関する新制度

前回は不動産登記法の改正、今回は民法改正について確認してきましたが、その他にも所有者不明土地に関する新制度も創設されます。

次回は新制度の詳しい解説を行います。

不動産トラブルなら弁護士法人一新総合法律事務所 東京事務所

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