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一新総合法律事務所 東京事務所
東京弁護士会所属
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本コラムでは、不動産管理の一部であるスポーツ施設等の管理に関して解説を行います。
スポーツ施設で事故が発生した場合、誰がその責任を負うのかについては非常に複雑な法律問題が潜んでいます。
スポーツ施設を当時運用していた者、スポーツ施設を設計した者、スポーツ施設を所有していた者、あるいは事故が発生してしまった利用者にも過失が認められる場合があります。
本コラムでは、スポーツ施設で事故が発生した場合の基本的な法律関係について解説します。
スポーツ施設で事故が発生した場合、スポーツ施設を占有・所有・管理等をしている者は、民法上「不法行為」による責任(民法709条)を負う可能性があります。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
不法行為が成立する要件として、①加害者の故意又は過失、②権利侵害、③損害の発生、④加害行為と損害の因果関係、⑤責任能力(加害行為により責任が生じることを認識する程度の知能を有している必要があります。幼児や精神上の障害がある場合などは賠償責任を負わないことがあります。)、⑥違法性が必要となります。
また、過失責任が認められるには、スポーツ事故における注意義務違反の具体的な内容をどう捉えるかが問題となります。
具体的な注意義務違反については、競技者の属性やスポーツ種目、スポーツ事故の当事者(施設の管理者やイベント主催者も含まれます。)等の個別事情を考慮する必要があります。
次に、スポーツ施設の占有者はいわゆる「工作物責任」(民法717条1項)を負う可能性があります。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
占有者とは、事実上施設を支配している者をいいます。
たとえば札幌ドームの場合には、株式会社北海道日本ハムファイターズおよび株式会社札幌ドームが占有者となります(札幌地判平成27年3月26日)。
そして、施設の設置又は保存に瑕疵(通常有するべき品質・性能を有していないことを言います。)があることによって損害が発生した場合、施設の占有者が損害を賠償する責任を負うことになります。
ただし、損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければいけないことになります。
所有者は、上記の通り、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときには無過失で責任を負うことになります。
つまり、損害の発生防止のために必要な注意を払っていたとしても責任を負うことになってしまいます。
また、市や国が施設を所有している場合もあります。
この場合には、国家賠償法上の営造物責任を問われることがあります。
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。
一方で、損害の原因について他に責任を負う者がいる場合は、占有者または所有者はその者に対して求償することができます(民法717条3項)。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 (略)
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
施設の管理者も占有者や管理者と同様、工作物責任や国家賠償法上の責任を負う可能性があります。
また、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、民間事業者等に施設の管理運営をさせる指定管理者制度(地方自治法244条の2)があります。
ですが、この場合でも地方自治体は国家賠償法上の管理責任は負うことになります。
普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。
2 普通地方公共団体は、条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて、これを廃止し、又は条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするときは、議会において出席議員の三分の二以上の者の同意を得なければならない。
3 普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの(以下本条及び第二百四十四条の四において「指定管理者」という。)に、当該公の施設の管理を行わせることができる。
4 前項の条例には、指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲その他必要な事項を定めるものとする。
5 指定管理者の指定は、期間を定めて行うものとする。
6 普通地方公共団体は、指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
7 指定管理者は、毎年度終了後、その管理する公の施設の管理の業務に関し事業報告書を作成し、当該公の施設を設置する普通地方公共団体に提出しなければならない。
8 普通地方公共団体は、適当と認めるときは、指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金(次項において「利用料金」という。)を当該指定管理者の収入として収受させることができる。
9 前項の場合における利用料金は、公益上必要があると認める場合を除くほか、条例の定めるところにより、指定管理者が定めるものとする。この場合において、指定管理者は、あらかじめ当該利用料金について当該普通地方公共団体の承認を受けなければならない。
10 普通地方公共団体の長又は委員会は、指定管理者の管理する公の施設の管理の適正を期するため、指定管理者に対して、当該管理の業務又は経理の状況に関し報告を求め、実地について調査し、又は必要な指示をすることができる。
11 普通地方公共団体は、指定管理者が前項の指示に従わないときその他当該指定管理者による管理を継続することが適当でないと認めるときは、その指定を取り消し、又は期間を定めて管理の業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
本コラムでは、スポーツ施設において事故が発生した際に問題となる法律について概観しました。
しかし、実際に誰がどこまで責任を負うのかは事例によって異なり、その判断は非常に複雑で難しいものです。
したがって、専門家である弁護士に相談し、見通しを立てることが重要になります。
すでにスポーツ事故が発生してしまったという場合には、一新総合法律事務所 東京事務所にご相談ください。
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