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2023.10.18
コラム

指定管理者制度とは?〜自治体との関係性と業務内容について〜

コラム著者

弁護士  栃原 遼太朗

東京事務所所属

不動産・建築紛争の取り扱いに注力。不動産管理業向け法改正セミナーなど、数多くのセミナー講師を担当。

【講師履歴】株式会社Century21・Japan様主催 「個人情報保護法改正セミナー」/弊所主催 「入居者トラブル対応セミナー」 etc.

              

はじめに

不動産業者の皆様方が普段事業を行う際に対象として想定する不動産は、基本的には個人又は法人が所有する不動産(私有財産)だと思われます。

ただ、世の中の不動産は全て私有財産というわけではなく、国や地方自治体が所有する不動産(公共施設)も当然ながら多数存在します。

このような財産については、事業の対象にはならないものとつい思いがちですが、不動産に関する管理・運営のノウハウ・能力を行政が十分に有していない場合も多く、結構な数の公共施設が、民間企業により管理・運営されているのが現状です。

今回の記事では、特に地方自治体が所有する公共施設の管理・運営における重要な制度である指定管理者制度について解説します。

指定管理者制度の概要

前提〜指定管理者制度と委託〜

まず、今回の記事で紹介する指定管理者制度は、簡単に言えば「地方自治体が所有する財産を民間事業者が管理・運営する際に活用される制度」となります。

ただ、民間企業(事業者)が公共施設を管理・運営する場合に、この制度を必ず使わなければならない、というわけではありません。

民間の施設において、所有者以外が管理・運営を行う場合は、所有者との間で管理委託契約をはじめとする委託契約を締結することになるかと思います。

このような委託による方法で、公共施設の管理・運営を行うことも可能です。

両者の違いについてはこの後でも触れますが、指定管理者制度は「委託」の一種であり、一定の管理・運営上の目的から活用される制度である(施設所有者が別の事業者に管理・運営を委ねるという点においては、通常の委託と変わるところはない)という点は、大前提として押さえておくとよいでしょう。

指定管理者制度とは
対象について

地方自治体が所有する不動産については、様々なものがありますが、その全てが指定管理者制度の対象となるわけではありません。

この制度の対象となるのは「公の施設」となります。

こちらは住民の福祉増進を目的としてそのために提供されている施設を指し(地方自治法(以下「法」244条1項)、体育館(運動施設)や図書館、市民会館、保育所、児童館等を指します。

第十章 公の施設(公の施設)

第二百四十四条 

普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。

指定管理者になりうる対象

指定管理者になりうるのは「法人その他の団体」です(法244条の2第4項)。

そのため、自然人(個人)は指定管理者になることはできません。

第二百四十四条の二 

(略)

 普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの(以下本条及び第二百四十四条の四において「指定管理者」という。)に、当該公の施設の管理を行わせることができる。

 前項の条例には、指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲その他必要な事項を定めるものとする。

(略)

地方自治体との関係性

公の施設の管理につき、通常の委託、すなわち地方自治体と事業者が、業務に関する(管理)委託契約を締結する場合、契約によりその内容は規律されます。

契約内容にもよりますが、少なくとも法的には両者は対等な関係性といえるでしょう。

一方で、指定管理者制度の場合、議会の議決に基づき、事業者が管理者として「指定」される形となり(法244条の2第6項)、業務範囲等についても、条例によって定められます(法244条の2第4項)。

この指定は、自治体から事業者に対する行政処分であり、指定管理者による公の施設の管理・運営が不適切な場合には、自治体側の判断でその指定を一方的に取り消すことも認められています(法244条の2第11項)。

この点において、両者は対等な関係性とはいえず、自治体側が事業者(指定管理者)に対して優越的な地位を有している、ということもできるでしょう。

指定管理者特有の業務内容

指定管理者制度と通常の委託の最大の違いは「公の施設の使用許可権限について、事業者への権限委譲の対象となるか否か」という点です。

指定管理者制度では、上記許可権限を事業者に委ねることが可能となります(法244条の2第3項)。

逆にいえば、使用許可以外の事務的な管理・運営業務のみであれば、指定管理者制度を利用せずとも通常の委託で対応可能です。

なお、公の施設において定められた目的以外の用途で施設を使用させることの許可(目的外使用許可)については、指定管理者制度によっては事業者に権限委譲することはできません(法238条の4第7項)。

こちらについては、施設・管理・運営主体に指定管理者が指定されていたとしても、自治体側が目的外使用許可の判断・決定を行わなければなりません。(「指定管理者制度の実務」p18~p19参照)

このほか、個別の法律(都市公園法・学校教育法など)に管理権者が自治体である旨が規定されている場合、規定された管理権限については、指定管理者に委託することはできません。

おわりに

今回の記事では、公の施設の管理・運営における重要な制度の一つである、指定管理者制度について、委託と対比する形で概要について解説しました。

現在では活用が進んでいる一方、制度の詳細(委託との差異等)については十分に周知されていないこともあり、今回テーマの一つとして取り上げました。

事業の一環として公共施設の管理・運営に携わっている、もしくは携わる予定の事業者様の参考となれば幸いです。

公の施設の管理・運営における重要な制度になりますので、指定管理者制度に関する疑問点は、弊所へお問合せください。

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