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弁護士 栃原 遼太朗
東京事務所所属
不動産・建築紛争の取り扱いに注力。不動産管理業向け法改正セミナーなど、数多くのセミナー講師を担当。
【講師履歴】株式会社Century21・Japan様主催 「改正個人情報保護法改正セミナー」/弊所主催 「入居者トラブル対応セミナー」 etc.
目次
以前のコラム「【国が立ち入り検査!?】賃貸管理会社が今すぐに確認すべきこと」にて取り上げました、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下「賃貸住宅管理業法」)の遵守状況確認のための立ち入り調査について、調査結果の詳細が公開されました。
今回のコラムでは、公開された調査結果を踏まえ、今後各事業者として何を注意すべきか、という点について改めて解説します。
2023年の1月から概ね2ヶ月間で、国土交通省が全国の賃貸住宅管理業者及びサブリース会社に対し、賃貸住宅管理業法の各社における遵守状況の確認を目的とした立ち入り調査を実施しました。
調査方法の概要については、前回コラムをご確認ください。
今回発表された調査結果の概要は以下のとおりです[1]。
[1] 国土交通省HP「賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者59社に是正指導~全国一斉 立入検査 結果(令和4年度)」
全国97社に対し実施、うち59社に対して是正指導がなされました。この59社については、すべて是正がなされたことを確認済みとのことです。
指導対象については「管理受託契約締結時の書面交付(賃貸住宅管理業法14条関係)」が最も多く、次いで「書類の備え置き及び閲覧(賃貸住宅管理業法32条関係)」「管理受託契約の締結前の重要事項説明(賃貸住宅管理業法13条関係)」が多くなっています。
賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結したときは、管理業務を委託する賃貸住宅の賃貸人(以下「委託者」という。)に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 管理業務の対象となる賃貸住宅
二 管理業務の実施方法
三 契約期間に関する事項
四 報酬に関する事項
五 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容
六 その他国土交通省令で定める事項
特定転貸事業者は、国土交通省令で定めるところにより、当該特定転貸事業者の業務及び財産の状況を記載した書類を、特定賃貸借契約に関する業務を行う営業所又は事務所に備え置き、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の求めに応じ、閲覧させなければならない。
1. 賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結しようとするときは、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人(賃貸住宅管理業者である者その他の管理業務に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者として国土交通省令で定めるものを除く。)に対し、当該管理受託契約を締結するまでに、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならない。
2. 賃貸住宅管理業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって国土交通省令で定めるものをいう。第三十条第二項において同じ。)により提供することができる。
この場合において、当該賃貸住宅管理業者は、当該書面を交付したものとみなす。
国土交通省としては、引き続き立ち入り検査等による法令遵守の指導を行うとともに、悪質な管理業法違反については、法に基づき厳正かつ適正に対処することを表明しています。
加えて、関係団体に対しても、更なる法令遵守の徹底を図るため、研修活動等を通じて賃貸住宅管理業法全般の適正化に向けた指導等を図るよう引き続き要請していくということも明らかにしています。
今回の調査結果から、管理業者(サブリース業者)の皆様においては、少なくとも以下の点は認識しておく必要があると考えられます。
前回のコラムでも「再度調査が実施される可能性が高い」という指摘はしていたところですが、調査を踏まえた今後の対応策においても、今後引き続き立入調査を行うことが明言されていることもあり、いずれかのタイミングで調査が実施される可能性は高いと言えるでしょう。
国土交通省(国土交通大臣)による登録業者への立ち入り調査権限については明文化されており(賃貸住宅管理業法26条1項)、このよう立入調査は法制度上も予定されているところです。
国土交通大臣は、賃貸住宅管理業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、賃貸住宅管理業者に対し、その業務に関し報告を求め、又はその職員に、賃貸住宅管理業者の営業所、事務所その他の施設に立ち入り、その業務の状況若しくは設備、帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
また、今回公開された調査結果から、是正指導がなされた場合はそれで終わるわけではなく、実際に是正が完了したか、という点までチェックしていることが示されています。この点もご注意ください。
賃貸住宅管理業法においては、管理受託契約書や特定賃貸借契約書重要事項説明書等、交付が義務付けられる書面についての記載事項が、法律・規則等により細かく定められており、これらの記載に不備があると法律(規則)違反となってしまいます。
基本的には国土交通省や関係団体が作成している書面ひな型に沿って記載事項を埋めていけば問題はないのですが、この点がきちんと徹底されているかという点については、社内のオペレーション含め再度ご確認ください。
また、ひな型を下手に修正してしまった結果、法定の記載事項欄が抜けた状態の契約書面を使用し続けていた、という事例も散見されます。
契約書面についてはそれなりの分量になることもあり「可能な限り短くしよう」という気持ち自体は理解できるところですが、リスクも大きいところですので、基本的には控えください。
賃貸住宅管理業者に課される帳簿の備付義務(賃貸住宅管理業法18条)、特定賃貸借事業者(サブリース業者)に課される業務状況調書作成義務(賃貸住宅管理業法32条)等、経理関係書類の不備についても多く指摘されています。
賃貸住宅管理業者は、国土交通省令で定めるところにより、その営業所又は事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備え付け、委託者ごとに管理受託契約について契約年月日その他の国土交通省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。
特定転貸事業者は、国土交通省令で定めるところにより、当該特定転貸事業者の業務及び財産の状況を記載した書類を、特定賃貸借契約に関する業務を行う営業所又は事務所に備え置き、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の求めに応じ、閲覧させなければならない。
経理関係書類については、税務上問題があるかどうかという点のみが問題になるものという意識を持ちがちですが、以上の通り、税務面とは別に賃貸住宅管理業法上も作成書類・内容について一定の規制がありますので、この点は見落とさないようご注意ください。
以上の他にも様々な法律違反・不備が指摘されているところですが、前回のコラムでも言及したように、賃貸住宅管理・サブリース事業に携わる事業者の皆様方には「いつ調査がなされてもおかしくない」という前提の下、改めて法律・規則等に則った事業の遂行がなされているのか、今一度ご確認いただくことをお勧めします。
上記の立入検査時に、国土交通省が公開している賃貸住宅管理業法に関する資料について、再度周知・徹底が図られたこともあり、これらの資料を確認し、現在の会社における運用状況に差異がないかという点の確認は有効な手段です。
公開資料全てに目を通すことは大変ですが、まずは賃貸住宅管理業法のポータルサイトを一度ご確認いただくことで、賃貸管理業者・特定賃貸借業者(サブリース業者)としてすべきことについての整理に一定程度役立つのではないかと思います。
その上で、個々の法律・規則等に関する具体的な運用確認、見直し方法についてご不明な点、お困り事等ございましたら、お気軽に一新総合法律事務所 東京事務所までお問い合わせください。
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