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2023.12.19
2024.09.04
コラム

国の立入検査に備えるには?賃貸管理業の立入検査チェックリスト

コラム監修者

一新総合法律事務所 東京事務所

東京弁護士会所属

不動産会社を中心に、不動産オーナー、不動産に関連するサービスを提供する企業のトラブル/法律相談を対応しています。年間1,100件以上(2023年実績)の不動産に関する相談を扱ってきた実績から、不動産分野の各種法律相談や契約書作成等幅広く対応が可能です。

はじめに

今回のコラムでは、チェックリスト、運用の考え方、変更時の対応、立ち入り調査の現状について解説します。

国土交通省による立入調査について

国土交通省では、令和5年1月から2月にかけて、全国97社の賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者へ立入検査を実施し、うち59社に是正指導を行いました。[1]

是正対象で特に多かったのは、以下の2点です。[2]

① 管理受託契約重要事項説明義務違反(賃貸住宅管理業法(以下略)第13条関係)17件

  ⇒法定記載事項の記載不備など

② 管理受託契約締結時の書面交付義務違反(第14条関係)28件

  ⇒法定記載事項の記載不備など

そこで、本稿では「管理受託契約重要事項説明に必要な法定記載事項」及び「管理受託契約締結時の交付書面の法定記載事項」に加え、「特定賃貸借契約重要事項説明に必要な法定記載事項」及び「特定賃貸借締結時の交付書面の法定記載事項」につき、チェックリストとして確認できるよう、一覧で紹介したいと思います(詳細はリンク先の国交省の資料をご確認ください)。

各項目でさらに記載すべき点がある場合には、その点も記載しておりますので、参考にしてください。

[1] https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001609597.pdf

[2] https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001609599.pdf

管理受託契約

1 締結前の重要事項説明において必要な記載項目(第13条、規則31条)[3][4]

① 管理受託契約を締結する賃貸住宅管理業者の商号、名称又は氏名並びに登録年月日及び登録番号

② 管理業務の対象となる賃貸住宅

③ 管理業務の内容

④ 管理業務の実施方法

⑤ 管理業務の一部の再委託に関する定めがあるときは、その内容

[3] https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001404841.pdf

[4] https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001474894.pdf

⑥ 責任及び免責に関する定めがあるときは、その内容

⑦ 法第二十条の規定による委託者への報告に関する事項

⑧ 契約期間に関する事項

⑨ 報酬、支払時期及び方法に関する事項

⑩ 賃貸住宅の入居者に対する③,④の周知に関する事項

⑪ ⑨の報酬に含まれていない管理業務に関する費用の内容

⑫ 契約の更新及び解除に関する事項

2 締結時書面(契約書)において必要な記載項目(第14条、規則第35条)

① 管理業務の対象となる賃貸住宅

② 管理業務の実施方法

③ 契約期間に関する事項

④ 報酬に関する事項

⑤ 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容

⑥ 管理受託契約を締結する賃貸住宅管理業者の商号、名称又は氏名及び住所並びに登録年月日、登録番号

⑦ 管理業務の内容

⑧ 管理業務の一部の再委託に関する定めがあるときは、その内容

⑨ 責任及び免責に関する定めがあるときは、その内容

⑩ 法第二十条の規定による委託者への報告に関する事項

⑪  賃貸住宅の入居者に対する周知に関する事項

第3 特定賃貸借契約(マスターリース契約)

1 重要事項説明に必要な法定記載事項(第30条、規則第46条)

① マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所

② マスターリース契約の対象となる賃貸住宅

  • マスターリース契約の対象となる賃貸住宅の所在地、物件の名称、構造、面積、住戸部分(部屋番号、住戸内の設備等)、その他の部分(廊下、階段、エントランス等)、建物設備(ガス、上水道、下水道、エレベーター等)、附属設備等(駐車場、自転車置き場等)等について記載し、説明する必要があります。
  • 区分所有建物のみを扱う場合には、オーナーから委託を受けている住宅の範囲が明確になれば足りるため、占有面積を記載することになります。附属設備等につきましても、共同住宅の管理会社が委託を受けているのであれば記載する必要はありません[5]
[5] 国交省問い合わせ。

③ 契約期間に関する事項

  • 契約の始期、終期、期間及び契約の類型(普通借家契約、定期借家契約)を記載し、説明する必要があります。
  • 特に、契約期間は、家賃が固定される期間ではないことを記載し、説明することとされています。

④ マスターリース契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日、支払方法等の条件並びにその変更に関する事項

  • サブリース業者がオーナーに支払う家賃の額、支払期限、支払い方法、家賃改定日等について記載し、説明する必要があります(家賃の他、敷金がある場合も同様です)。
  • サブリース業者がオーナーに支払う家賃の設定根拠について、近傍同種の家賃相場を示すなどして記載し、説明する必要があります。
  • 特に、契約期間が長期である場合などにおいて、オーナーが当初の家賃が契約期間中変更されることがないと誤認しないよう、家賃改定のタイミングについて説明し、当初の家賃が減額される場合があることを記載し、説明する必要があります。
  • さらに、契約において、家賃改定日が定められていたとしても、その日以外でも、借地借家法に基づく減額請求ができることについても記載し、説明する必要があります。
  • また、入居者の新規募集や入居者退去後の募集に、一定の時間がかかるといった理由から、サブリース業者がオーナーに支払う家賃の支払いの免責期間を設定する場合は、その旨を記載し、説明する必要があります。

⑤ サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法

  • サブリース業者が行う維持保全の内容について、回数や頻度を明示して可能な限り具体的に記載し、説明する必要があります。
  • 維持保全の内容としては、住戸や玄関、通路、階段等の共用部分の点検・清掃等、電気設備、水道設備、エレベーター、消防設備等の設備の点検・清掃等の結果を踏まえた必要な修繕等が考えられます。
  • 賃貸住宅の維持保全と併せて、入居者からの苦情や問い合わせへの対応を行う場合は、その内容についても可能な限り具体的に記載し、説明する必要があります。
  • なお、維持又は修繕のいずれか一方のみを行う場合や入居者からの苦情対応のみを行い維持及び修繕(維持・修繕業者への発注等を含む)を行っていない場合であっても、その内容を記載し、説明することが望ましいとされています。

⑥ サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項

⑦ マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項

  • サブリース業者が行う維持保全の実施状況について、賃貸人に報告する内容やその頻度について記載し、説明する必要があります。

⑧ 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項

  • 引渡日に物件を引き渡さない場合や家賃が支払われない場合等の債務不履行や、契約の解約の場合等の損害賠償額の予定又は違約金を定める場合はその内容を記載し、説明する必要があります。

⑨ 責任及び免責に関する事項

  • 天災等による損害等、サブリース業者が責任を負わないこととする場合は、その旨を記載し、説明する必要があります。
  • オーナーが賠償責任保険等への加入をすることや、その保険に対応する損害についてはサブリース業者が責任を負わないこととする場合は、その旨を記載し、説明する必要があります。

⑩ 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項

  • 反社会的勢力への転貸の禁止や、学生限定等の転貸の条件を定める場合は、その内容について記載し、説明する必要があります。

⑪ 転借人に対する⑤の内容の周知に関する事項

  • サブリース業者が転借人に対して周知を行う以下に掲げる維持保全の内容についてどのような方法(対面での説明、書類の郵送、メール送付等)で周知するかについて記載し、説明する必要があります。
  • サブリース業者が行う維持保全の具体的な内容(住戸や玄関、通路、階段等の共用部分の点検・清掃等、電気設備、水道設備、エレベーター、消防設備等の設備の点検・清掃等、点検等の結果を踏まえた必要な修繕等)、その実施回数や頻度などが考えられます。
  • サブリース業者が行う入居者からの苦情や問い合わせへの対応の具体的な内容(設備故障・水漏れ等のトラブル、騒音等の居住者トラブル等)、対応する時間、連絡先が考えられます。
  • サブリース業者が行う維持保全の具体的な内容や設備毎に、オーナーとサブリース業者のどちらが、それぞれの維持や修繕に要する費用を負担するかについて記載し、説明する必要があります。
  • 特に、オーナーが費用を負担する事項について誤認しないよう、例えば、設備毎に費用負担者が変わる場合や、オーナー負担となる経年劣化や通常損耗の修繕費用など、どのような費用がオーナー負担になるかについて具体的に記載し、説明する必要があります。
  • また、修繕等の際に、サブリース業者が指定する業者が施工するといった条件を定める場合は、必ずその旨を記載し、説明する必要があります。

⑫ マスターリース契約の更新及び解除に関する事項

⑬ マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項(以下、雛形も用意されているため、そちらもご参照ください[6]。)

[6] https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001409434.docx

14 借地借家法第32条第1項(借賃増減請求権)について

  • マスターリース契約を締結する場合、借地借家法第32条第1項(借賃増減請求権)が適用されるため、サブリース業者がオーナーに支払う家賃が、変更前の家賃額決定の要素とした事情等を総合的に考慮した上で、

① 土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により不相当となったとき

② 土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により不相当となったとき

③ 近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、サブリース業者は家賃を相当な家賃に減額することを請求することができること及び空室の増加やサブリース業者の経営状況の悪化等が生じたとしても、上記①~③のいずれかの要件を充足しない限りは、同条に基づく減額請求はできないことを記載し、説明する必要があります。

  • 特に、契約において、家賃改定日が定められている場合や、一定期間サブリース業者から家賃の減額はできないものとする、○年間は家賃の減額をできないものとする、オーナーとサブリース業者が合意の上家賃を改定する等の内容が契約に盛り込まれていた場合であっても、借地借家法第32条第1項に基づき、サブリース業者からの家賃の減額請求はできることを記載して説明し、オーナーが、これらの規定により、サブリース業者からの家賃減額はなされないと誤認しないようにする必要があります。
  • さらに、借地借家法に基づき、サブリース業者は減額請求をすることができるが、オーナーは必ずその請求を受け入れなければならないわけでなく、オーナーとサブリース業者との間で、変更前の家賃決定の要素とした事情を総合的に考慮した上で、協議により相当家賃額が決定されることを記載し、説明する必要があります。なお、家賃改定額について合意に至らない場合は、最終的には訴訟によることとなります。

15 借地借家法第28条(更新拒絶等の要件)について

16 借地借家法第38条(定期建物賃貸借)について

  • 普通借家契約としてマスターリース契約を締結する場合、借地借家法第28条(更新拒絶等の要件)が適用されるため、オーナーから更新を拒絶する場合には、

① オーナー及びサブリース業者(転借人(入居者)を含む)が建物の使用を必要とする事情

② 建物の賃貸借に関する従前の経過

③ 建物の利用状況及び建物の現況並びにオーナーが建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えにサブリース業者(転借人(入居者)を含む)に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができない旨を記載し、説明すること。特に、契約において、オーナーとサブリース業者の協議の上、更新することができる等の更新の方法について定められている場合に、オーナーが、自分が更新に同意しなければ、サブリース業者が更新の意思を示していても、契約を更新しないことができると誤認しないようにする必要があります。

  • 定期借家契約としてマスターリース契約を締結する場合、家賃は減額できないとの特約を定めることにより、借地借家法第32条の適用はなく、サブリース業者から家賃の減額請求はできないことを記載し、説明する必要があります。
  • 定期借家契約としてマスターリース契約を締結する場合、契約期間の満了により、契約を終了することとできることを記載し、説明する必要があります。
  • 定期借家契約としてマスターリース契約を締結する場合、オーナーからの途中解約は、原則としてできないことを記載し、説明する必要があります。

2 契約締結時の交付書面の法定記載事項(第31条)

① マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所

② マスターリース契約の対象となる賃貸住宅

③ 契約期間に関する事項

④ マスターリース契約の相手方に支払う家賃その他賃貸の条件に関する事項

⑤ サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法

⑥ サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項

⑦ マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項

⑧ 損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容

⑨ 責任及び免責に関する定めがあるときは、その内容

⑩ 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項

⑪ 転借人に対するサブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の周知に関する事項

⑫ 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容

⑬ マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項

契約内容を変更する場合[7]

[7] https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/04/sankou.pdf

法施行に対応するため、契約内容を変更する場合には、そのタイミングに応じて以下の対応が必要となります。

1 法施行前に締結された契約の場合

 この場合、内容変更を伴う契約変更をするときには、すべての事項につき重要事項説明を行い、契約締結時の書面を交付する必要があります。契約の更新を行う際にも内容の変更があるときには上記と同様の対応を行う必要があります。

2 法施行後に締結された契約の場合

 こちらの場合には内容変更を伴う契約変更をするときには、変更部分のみにつき重要事項説明及び契約締結時の書面を交付すれば足ります。内容変更を伴う契約更新の際にも同様です。なお、契約の同一性を保ったままで契約期間のみを延長することや、組織運営に変更のない商号又は名称等の変更等、形式的な変更と認められる場合は、重説の再実施、契約時書面の再交付は不要です。

結語

国交省による立入検査はまだ始まったばかりですが、早めの対応を行うためにも、不動産分野に特化した弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

一新総合法律事務所東京事務所 不動産トラブル 電話番号

第3 特定賃貸借契約(マスターリース契約)

1 重要事項説明に必要な法定記載事項(第30条、規則第46条)

① マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所

② マスターリース契約の対象となる賃貸住宅

・ マスターリース契約の対象となる賃貸住宅の所在地、物件の名称、構造、面積、住戸部分(部屋番号、住戸内の設備等)、その他の部分(廊下、階段、エントランス等)、建物設備(ガス、上水道、下水道、エレベーター等)、附属設備等(駐車場、自転車置き場等)等について記載し、説明する必要があります。 ・ 区分所有建物のみを扱う場合には、オーナーから委託を受けている住宅の範囲が明確になれば足りるため、占有面積を記載することになります。附属設備等につきましても、共同住宅の管理会社が委託を受けているのであれば記載する必要はあ


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