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一新総合法律事務所 東京事務所
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平成の末期から断続的に活発化していた能登半島での地震ですが、令和6年1月1日、マグニチュード7.6、震源の深さは16km、石川県輪島市などで最大震度7が観測されるという、記録的な大震災が起こってしまいました。
この令和6年能登半島地震によって、多くの建物が倒壊し、200名を超える犠牲者が出る事態となりました。
地震などの天災によって建物が倒壊し、それにより他人に損害を与えてしまった場合には誰が責任を負うことになるのでしょうか。
本稿では、地震が発生して損害が生じた場合の法的責任とその主体について整理したいと思います。
地震で建物などが倒壊することにより損害が生じた場合には、工作物責任(民法第717条)が問題となります。
「土地の工作物」は広く解釈されており、建物以外にもブロック塀や工場に設置されている機械類も含むとされています[1]。
工作物責任が問題となる場合、まず建物の占有者が損害を賠償する責任を負うことになります(建物の賃借人など)。
しかし、占有者は、「損害の発生を防止するのに必要な注意をしたとき」には、その責任を免れることとされています。
一方で、所有者には上記のような規定がないため、建物の管理などに過失がなかった場合でも賠償の責任を負うことになってしまいます。
所有者はいつでも責任を負うわけではなく、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵」がなければ責任を負いません。
「設置又は保存に瑕疵がある」とは、工作物として通常備えているべき安全性が欠けていることをいいます。
「瑕疵」の有無について問題となったものとして、以下の裁判例があります。
[1] 我妻・有泉コンメンタール民法[第8版] 総則・物権・債権
阪神淡路大震災により中古賃貸マンションの一階が押しつぶされ、借主が死亡したという事案になります。
阪神淡路大震災も深さ16kmを震源とするマグニチュード7.3[2]の非常に大規模な震災であり、貸主は不可抗力を主張していましたが、裁判所は以下の通り判示し、貸主の賠償責任を認めています。
設計震度とは「建築物や屋外の貯蔵タンクなどが、揺れによって耐えなければならない「地震の加速度」に相当する値」[4][5]のことです。
つまり、現在の設計震度を超える様な大規模な震災であっても、建物に瑕疵がある場合には所有者は工作物責任を負う可能性があることになります。
なお、上記の裁判例では、倒壊は瑕疵と地震の競合したもので、地震の損害発生への寄与度は5割とされており、建物倒壊により生じた損害の5割相当額の損害賠償義務を負うこととされています。
他にも、ブロック塀の設置の瑕疵が問題となった裁判例では、「ブロック塀が地盤、地質、施工状況等の諸事情に照らして震度「五」の地震に耐え得る安全性を有していなかったことが明らかにされなければならないものといわなければならない。」とされています(仙台地裁昭和56年5月8日判決)。[6]
[2] https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/earthquake/index.html[3] https://www.retio.or.jp/attach/archive/45-082.pdf[4] https://suumo.jp/yougo/s/seltukeishindo/[5] https://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/guide/magazine/glossary/175_58.pdf[6] https://atlaslaw.net/data/pdf/siryo-160717/s560508-sendai.pdf 13頁
現在では、震度6を超える地震も散見されますから、建物などに瑕疵がなかったと判断されるためには、より高い震度にも耐えうるものであることが必要になると思われます。
地震は一度発生すると甚大な被害が生じるものですが、予見することは困難です。
今後大規模地震が発生するたびに、建物の耐震性に対する視線は厳しいものになっていくでしょうから、建物の管理の重要性も増していくことになります。
大規模なものに限らず、地震により建物の耐震性が原因で損害が生じることもあり得ます。
実際に損害が生じてしまい、法的な問題が生じたあるいは生じる可能性がある場合には、不動産に注力する弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
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