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一新総合法律事務所 東京事務所
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市や区などの地方自治体が所有するスポーツ施設では、ほとんどの場合、指定管理者が指定されています。例えば、中央区立総合スポーツセンターでは、指定管理者として中央区スポーツ未来創造パートナーズが指定されています。
指定管理者制度は、特定の業務や施設の管理を、公的な機関や自治体が民間の事業者に委託する制度です。
このように、地方自治体が所有する体育館等の運営を市職員が行っていたところ、人件費や業務効率化の観点から、今後は民間企業等に任せたい場合などに指定管理者が設置されることになります。
本稿では、指定管理者も含め、地方自治体が外部の民間企業等に施設の管理を委任する方法と、スポーツ施設での事故につき、指定管理者の責任が問題となった例を紹介したいと思います。
まず、指定管理者を設置することができるのは、「公の施設」に限られます(地方自治法第244条の2第3項)。
(公の施設の設置、管理及び廃止)
第二百四十四条の二
3 普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であって当該普通地方公共団体が指定するもの(以下本条及び第二百四十四条の四において「指定管理者」という。)に、当該公の施設の管理を行わせることができる。
「公の施設」とは、「住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設」のことをいいます(地方自治法第244条第1項)。たとえば、体育館のほか,病院,図書館,市民会館,保育所,児童館等があります。
(公の施設)
第二百四十四条
普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
そして、公の施設を市の職員が管理することも当然可能ですが、上記の通り人件費や業務の効率化のため、外部の民間企業等に管理を委任することが考えられます。
そのためには、法律上以下の2つの方法があります。
①自治体と民間企業との間で業務委託契約を締結すること。
②自治体が民間企業を指定管理者に指定すること。
両者にはそれぞれ以下のような違いが存在します。
まず、業務委託契約は、自治体と民間企業が対等な立場で締結する契約です。
したがって、受託者を選択するにあたっては地方自治法等に基づいて競争入札や任意の契約によって行われることになり,議会の議決は原則として不要です。
また、管理の基準・期間や業務の範囲についても契約で定めることになります。
そして、業務委託契約の場合には、管理権限が自治体に残されることになります。
したがって、受託者が行政処分である施設の使用許可を行うことはできません。
業務委託契約は、主に清掃等の事実行為や公の施設で実施されるイベント等の企画業務が対象となり、これらの業務は業務委託契約により民間企業等に委ねられてきました。
一方で、指定管理者制度の場合、公の施設の管理権限は自治体から民間企業に移ることになります。
そのため、受託者(指定管理者)を指定するにあたっては議会の議決が必要になります(地方自治法第244条の2第6項)。
(公の施設の設置、管理及び廃止)
第二百四十四条の二
6 普通地方公共団体は、指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
したがって、この場合には、指定管理者が施設の使用許可を行うことができます。
また、管理の基準や業務の範囲については、条例で定められることになり(地方自治法第244条の2第4項)、管理を行わせる期間については、指定管理者の指定の際に期間を定め、議会の議決を経る必要があります(地方自治法第244条の2第5項第6項)。
(公の施設の設置、管理及び廃止)
第二百四十四条の二
4 前項の条例には、指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲その他必要な事項を定めるものとする。
5 指定管理者の指定は、期間を定めて行うものとする。
6 普通地方公共団体は、指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
さらに、指定管理者制度では,自治体が適当と認めるときは,利用料金を指定管理者自体の収入として収受させることができます(地方自治法第244条の2第8項)。
この場合、利用料金は条例で定めるところによって指定管理者により定められ、指定管理者はその利用料金についてあらかじめ自治体の承認を受ける必要があります(地方自治法第244条の2第9項)。
(公の施設の設置、管理及び廃止)
第二百四十四条の二
8 普通地方公共団体は、適当と認めるときは、指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金(次項において「利用料金」という。)を当該指定管理者の収入として収受させることができる。
9 前項の場合における利用料金は、公益上必要があると認める場合を除くほか、条例の定めるところにより、指定管理者が定めるものとする。この場合において、指定管理者は、あらかじめ当該利用料金について当該普通地方公共団体の承認を受けなければならない。
以上では、公の施設について自治体の職員による管理を外部の民間企業等に委任する場合の制度を概観しましたが、スポーツ施設に関して指定管理者の責任が問題となった例を紹介したいと思います。
平成22年8月21日に札幌ドームで行われたプロ野球の試合において、打者の打ったファウルボールが観客の顔面に直撃して失明してしまったという事件です。
ケガをした観客は、札幌ドームを所有していた札幌市、試合を主催して球場を占有していた日本ハムファイターズに加え、指定管理者として札幌ドームを占有していた株式会社札幌ドームを被告として、損害賠償請求訴訟を提起しました。
裁判では、本件、球場の通常有すべき安全性はどのような観客を前提に判断をすべきか、野球観戦にあたって期待される臨場感の確保の要請をどの程度まで重視するか、という2点が大きな争点となりました。
結論としては、日本体育施設協会屋外体育施設部会編『屋外体育施設の建設指針〔平成24年改訂版〕が参照され、札幌ドームではそこで定められている内野フェンスの高さの基準をほぼ満たしており、他にもファウルボールが飛んできた際の警告の笛などの安全対策等が考慮され、指定管理者の株式会社札幌ドームの責任は否定されました。
施設での事故につき責任を負いうるため、ガイドラインや指針等で定める設備の安全基準を満たしているか、常に対応を続けていく必要があります。
実際に事故が発生してしまった場合や、現状の対応でどのような責任を負いうるかなど、法的問題に直面した場合には弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
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