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2022.12.13
コラム

♦︎賃借人の孤独死♦︎原状回復は誰に請求できる?

コラム著者

弁護士  田上 博也

東京事務所所属

不動産オーナーにおける賃貸トラブル案件を主に担当。クライアントに寄り添う姿勢を持ち、信頼に応えることを心掛けている。

              

建物の賃借人が亡くなった場合、次の入居者のために原状回復を行う必要があります。

原状回復を行う費用については、その一定割合を賃借人が負担することが通常です。

しかし、賃貸借契約を締結していた賃借人が亡くなっている以上、賃借人本人に請求することはできません。

そこで、賃借人が賃貸借契約締結中に亡くなった場合に、誰に対して原状回復費用を請求できるのか、以下で相手方ごとに列挙して解説していきます。

1. 相続人に請求

建物を賃借している方が亡くなった場合、原則として亡くなった方(被相続人)の相続人がその建物の賃借人の地位を受け継ぐこととなります。

民法 第896条

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。
ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

したがって、建物の賃借人が亡くなった場合、まずは相続人の所在・連絡先を調査し、被相続人が亡くなったこと、原則として建物の賃借人の地位を受け継ぐこと及び原状回復の必要性があることを伝える必要があります。

ただし、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、相続放棄を行うことができます。

民法 第938条

相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

民法 第939条

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされますので、建物の賃借人の地位も受け継がないこととなります。

この場合、相続放棄をした者には原状回復費用の請求をすることができなくなってしまいます。

2. 連帯保証人に請求

亡くなった方(被相続人)に相続人がいる場合でも、亡くなった方(被相続人)の連帯保証人に対しては、原状回復費用の請求を行うことができます。

民法で以下のとおり定められている他、建物の賃貸借契約書に保証の範囲が記載されていることもあります。

民法 第447条

保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。

そして、建物の賃料や原状回復費用を保証する保証契約は、賃貸人と保証人間での契約ですので、賃借人の相続人による相続放棄により影響を受けることがありません。

したがいまして、上記のとおり賃借人の地位を引き継ぐはずの相続人が相続放棄を行った場合でも、連帯保証人に対しては原状回復費用の請求をすることができます。

また、連帯保証人が亡くなっている場合でも、その相続人が連帯保証人の債務を引き継ぎますので、相続人に対し原状回復費用を請求することとなります。

ただし、民法改正に伴い、2020年4月1日以降に締結された賃貸借契約では、連帯保証人が個人の場合には、極度額(保証される額の上限)を定めることが必須となりますので、原状回復費用が多額に上るときには注意が必要です。

3. 保証会社に請求する

建物を借りる際に、連帯保証人を見つけることが難しい方もいらっしゃいます。

そのような場合でも、保証会社が連帯保証人となっている場合があります。

保証会社がついている場合には、賃貸借契約とは別に保証契約書が作成されていることがありますので、原状回復費用を請求できる範囲を確認する必要があります。

4. まとめ

以上のように、原則として賃借人の相続人が原状回復費用を支払うこととなりますが、相続人の中には賃借人と疎遠であり、相続放棄をしてしまうことも少なくありません。

この場合には、他の相続人や連帯保証人をあらためて調査し、費用の請求をする必要があります。

賃借人が孤独死するリスクはいつでもありますので、入居者の孤独死の対応についてご心配な方は弁護士にご相談ください。

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