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不動産取引契約の完全オンライン化が2022年5月18日までに解禁されます。
昨年5月に成立した「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」において、押印・書面交付が規定されている121の法令が一括で改正されることとなり、不動産業に関連する宅地建物取引業法なども改正されるためです。
・民法
・宅地建物取引業法
・借地借家法
・マンション管理の適正化の推進に関する法律
・不動産の鑑定評価に関する法律
・マンション建替え等の円滑化に関する法律
電子契約の完全解禁に向けて、すでに契約のオンライン化整備を行っている不動産会社もいらっしゃいますが、一方で、「そもそも具体的に何が変わるのか?」とお思いの方々もいらっしゃるでしょう。
そのような不動産業者の方々のために、日々の業務に影響する電子化に関する法改正についてのポイントを解説いたします。
目次
現行法では、宅建業者は不動産の売買・交換・賃貸借の契約が成立する前に、当該不動産に設定されている権利などの重要事項を記載した書面を契約両当事者に書面で交付する必要があります(第35条1項)。
その書面には、宅地建物取引士の記名と押印が必要になります(第35条5項)。
また、ご存知のとおり、書面の交付の際は宅地建物取引士が契約両当事者に説明を行わなければなりません(第35条1項)。
新法では、重要事項説明書における宅地建物取引士の押印が不要になり(新法第35条5項、7項)、書面を電磁的方法で交付することが可能になります(新法第35条8項、9項)。
ただし、電磁的方法で交付するには事前に契約当事者に承諾を得る必要があります。
仮に、契約当事者が電磁的方法を希望しない場合は書面によって交付をしなければなりません。
また、電磁的方法、書面のいずれの方法でも宅地建物取引士の重要事項説明は必ず必要です。
現在、「IT重説」と呼ばれるWEB会議ツールなどのITを活用して重要事項説明を行うことが認められていますので、新法となれば、重要事項説明書をメールなどで事前にお送りをしてIT重説を行うことが可能になります。
遠隔地にいる、または外出が一時的に困難なお客様にもスムーズに契約まで進めていただけるメリットがあります。
改正後の宅地建物取引業法(第35条)
(書面の交付)
第35条
1〜4(略)
5 第一項から第三項までの書面の交付に当たつては、宅地建物取引士は、当該書面に記名しなければならない。6 (略)
7 宅地建物取引業者は、前項の規定により読み替えて適用する第一項又は第二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名させなければならない。
8 宅地建物取引業者は、第一項から第三項までの規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、第一項に規定する宅地建物取引業者の相手方等、第二項に規定する宅地若しくは建物の割賦販売の相手方又は第三項に規定する売買の相手方の承諾を得て、宅地建物取引士に、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第五項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供させることができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該宅地建物取引士に当該書面を交付させたものとみなし、同項の規定は、適用しない。
9 宅地建物取引業者は、第六項の規定により読み替えて適用する第一項又は第二項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、第六項の規定により読み替えて適用する第一項に規定する宅地建物取引業者の相手方等である宅地建物取引業者又は第六項の規定により読み替えて適用する第二項に規定する宅地若しくは建物の割賦販売の相手方である宅地建物取引業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第七項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を交付したものとみなし、同項の規定は、適用しない。
重要事項説明と同様、宅建業者は、不動産の売買・交換・賃貸借の契約の成立の際に、契約当事者の氏名や不動産の引き渡しの時期などの必要事項を記載した書面を当事者に遅滞なく交付しなければなりません(第37条1項、2項)。
この書面がいわゆる「37条書面」です。
多くの不動産会社では宅地建物取引士が契約当事者と対面して、37条書面を交付するかたちを取られているでしょう。
また、37条書面は宅地建物取引士の記名と押印が必要です(第37条3項)。
新法では、37条書面における宅地建物取引士の押印が不要になり(新法第37条3項)、書面を電磁的方法で交付することが可能になります(新法第37条4項、5項)。
ただし、こちらも電磁的方法で交付するには事前に契約当事者に承諾を得る必要があります。
仮に、契約当事者が電磁的方法を希望しない場合は書面で交付しなければなりません。
改正後の宅地建物取引業法(第37条)
第37条
1〜2条(略)
3 宅地建物取引業者は、前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名させなければならない。
4 宅地建物取引業者は、第一項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて前項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を交付したものとみなし、同項の規定は、適用しない。
1 自ら当事者として契約を締結した場合当該契約の相手方
2 当事者を代理して契約を締結した場合当該契約の相手方及び代理を依頼した者
3 その媒介により契約が成立した場合当該契約の各当事者
5 宅地建物取引業者は、第二項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第三項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を交付したものとみなし、同項の規定は、適用しない。
1 当事者を代理して契約を締結した場合当該契約の相手方及び代理を依頼した者
2 その媒介により契約が成立した場合当該契約の各当事者
宅建業者は、不動産の売買または交換の媒介契約を締結した際には、遅滞なく定められた事項を記載した書面を依頼者に交付しなければなりません(第34条の2-1項)。
これは代理契約の場合でも同様に定められています(第34条の3)。
新法では、媒介契約と代理契約も、依頼者の承諾を得られれば電磁的方法により定められた事項を提供することが認められます。
ただし、重要事項説明書や37条書面と違って、押印または、それに代わる措置を講じることが求められているため、その点には注意が必要です(新法第34条の2-11項、新法第34条の3)。
改正後の宅地建物取引業法(第34条の2、第34条の3)
(媒介契約)
第34条の2
1〜10(略)
11 宅地建物取引業者は、第一項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)であつて同項の規定による記名押印に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面に記名押印し、これを交付したものとみなす。
(代理契約)
第34条の3
前条の規定は、宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約について準用する。
宅建業者は専任媒介契約を締結した際は、契約の目的物である不動産について定められている事項を指定流通機構、いわゆる「レインズ(REINS)」に登録をし(第34条の2-5項)、登録を証明する書面を遅滞なく依頼者に引き渡す必要があります(第34条の2-6項、第50条の6)。
新法ではレインズ(REINS)に登録されたことを証明する書面の引き渡しに代えて、依頼者の事前の承諾のもと、証明書に記載の事項を電磁的方法によって提供することが可能となります(新法第34条の2-12項)。
この場合、証明書を引き渡したとみなされます。
改正後の宅地建物取引業法(第34条の2)
(媒介契約)
第34条の2
1〜11(略)
12 宅地建物取引業者は、第六項の規定による書面の引渡しに代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面において証されるべき事項を電磁的方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を引き渡したものとみなす。
前述のとおり、法改正におけるポイントについて解説を行いましたが、不動産業者が電子契約を実務で活用するためには事前準備が必要になります。
一新総合法律事務所では、不動産業者のための電子契約導入実践の無料セミナーを開催いたします。
セミナーでは、弁護士 大橋良二による「より実務に沿った法改正の解説」、システム会社から「電子契約導入に向けて準備すべきこと」、コンサルタントから「電子契約ツールの効率的な活用方法について」をお伝えし、電子契約の実践に向けて準備すべき項目が全て学べる、フルパッケージの内容となっています。
電子契約実践のための導入に至れていない、電子契約への不安が拭えない不動産業者の方々はぜひご参加ください。
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