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2023.04.28
コラム

【認知症になってからでは遅い!】不動産オーナーの認知症対策を早めに行う必要があるワケ

認知症になってからでは遅い!不動産オーナーの認知症対策を早めに行う必要があるワケ 弁護士法人一新総合法律事務所 東京事務所
コラム著者

弁護士  田上 博也

東京事務所所属

不動産オーナーにおけるトラブル案件を主に担当。クライアントに寄り添う姿勢を持ち、信頼に応えることを心掛けている。

              

はじめに

内閣府の平成29年版高齢社会白書(概要版)によると、「65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったが、2025年には約5人に1人になるとの推計もある 」と見込まれており、認知症は誰もが避けて通れない重要な問題です。

不動産オーナーの認知症が進行するとおこるリスクとは?

まずは、認知症の進行の不動産オーナーへの影響を法律面から説明します。

認知症が進行すると法律上、「意思能力を欠く状態」となります。意思能力とは、「法律上の判断において自己の行為の結果を判断することができる能力」などと定義されますが、わかりやすさのために簡易に説明すると、「契約を締結するために必要な能力」といった意味となります。

意思能力(民法第3条の2)

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

では、より具体的に認知症が進み意思能力を欠くことになると、どうなってしまうでしょうか。

「契約」を締結しても無効になるわけですから、認知症が進行して意思能力を欠くことになると、売買契約や賃貸借契約を締結できなくなります。

要するに、認知症の進行した方が所有する不動産は、売れないし、貸せない、契約できない状態となります。

贈与も「契約」ですから、生前の相続対策として、生前贈与もできなくなりますし、それこそ賃貸管理を委託することも「契約」ですので、管理会社を依頼する・変えるようなこともできなくなってしまいます。

遺産分割協議による合意も一種の「契約」ですから、たとえば、夫が亡くなった際に、相続人である妻の認知症が進んでいて意思能力がないと、遺産分割協議をすることもできなくなります。

・不動産を売ることができなくなる
・不動産の管理委託することができなくなる
・遺言も生前贈与もできなくなる
・不動産を賃貸に出すこともできなくなる
・遺産分割もできなくなる
→その他にも基本的に意思能力ない場合には契約は無効となります。

不動産オーナーの認知症が進行する前に対策を

最近は、⺠事信託を利用した認知症対策などもありますが、そのような対策も、委託者である不動産オーナーに意思能力があることが前提となります。

これまでは、相続予定の「⻑男」が認知症の進んだ親にかわりに契約書に署名する、などということも認められていたケースもあるかもしれませんが、皆さんもご存じのとおり、年々、各企業が法令遵守(コンプライアンス)を徹底するようになりますので、今後は、意思能力がない人との「契約」は「できない」「お断り」というケースがさらに増えていくと思われます。

ですから、認知症が進んでからでは遅く、認知症が進行して意思能力を欠くことになる「前に」対策を打つ必要があります。

不動産オーナーの認知症が進行して契約ができなくなってしまったら?

次に、認知症が進行し契約ができなくなった後に、不動産を活用しようとした場合には、どうすればよいのでしょうか?

この場合、皆さんもご存じの「成年後見制度」の活用が考えられます。(なお、ここでは法定後見を指して説明しています。)不動産のオーナーが認知症が進み、契約などの財産管理ができない状態に至った場合には、家庭裁判所に成年後見の申立てを行い、成年後見人を選任することで、認知症の進んだオーナーに代わり、成年後見人が財産管理を行うことができるようになります。

より具体的には、成年後見人がオーナーに代わって、賃貸借契約を結んだり、遺産分割協議を行ったりすることができるようになります。

「成年後見制度」で安心?

では、このような成年後見制度があるから問題ないか、というと、そうではありません。この成年後見制度(法定後見)には、さまざまな問題点が指摘されています。

① 専門職が成年後見人に選任される場合が多い

親族ではなく、弁護士や司法書士等の専門職が後見人として選任されるケースが少なくありません。

成年後見関係事件の概況令和4年1月~12月、最高裁判所事務総局家庭局)によると、親族以外が成年後見人等に選任されたものは全体の約80.9%です。

子どもからすれば、親の財産を突然、第三者の専門職が関与して、財産管理を行うことになりますので、そのような事態を望まない人も少なくありません。また、親族が後見人になっても、専門職が「後見監督人」といって監督役として付くケースもあります。

② 専門職の報酬(費用)を負担しなければなりません

こちらの報酬が財産額にもよりますが、東京家庭裁判所の「成年後見人等の報酬額のめ目安」によると流動資産等の管理財産額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合には、基本報酬額を月額3万円から4万円」と定められています。

年間にすれば、36万円から48万円、これが基本的には、認知症の方が亡くなるまで負担が継続して必要となりますので(途中でやめられない)、毎年それなりの費用負担が必要となります。

③ 財産管理に制約がある、思うような財産管理はできないかもしれません。

成年後見人は、本人の「財産を維持管理」することを目的とした制度ですので、不動産投資などの投機的な資産運用はできないこともあります。

節税対策として親族に毎年贈与するなど、財産が流出する方向での財産処分はできないことが通常です。

当事務所がサポートできること

以上のとおり、認知症が始まってからの成年後見制度には問題点もあり、敬遠する方も少なくありません。

このように、認知症になった「後」に利用する成年後見制度(法定後見)では問題が少なくないのです。

認知症になる「前」の対策が肝心ですので、不動産オーナーの様子がおかしいと感じた際は、まずは弁護士にご相談ください。

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